yumeayu

プライベート・ライアンのyumeayuのレビュー・感想・評価

プライベート・ライアン(1998年製作の映画)
4.5
"フーバー"

いまさら説明不要の名作。
何度見ても序盤のノルマンディー上陸作戦のシーンの恐ろしさに体が震える。
今作以降も多くの戦争映画を見てきたが、未だにこのシーンを上回る作品に出会ったことがない。
小さな揚陸艇にすし詰め状態の米兵達。神に祈るもの、嘔吐する者…。
いざ上陸作戦が始まるも、敵の機銃に一掃され、呆気なく散っていく兵士達。オマハ・ビーチは血に赤く染まる…。
リアルという言葉だけでは言い表せない、生々しい戦場の描写に言葉を失う。

激戦を経てようやく上陸したのも束の間、トム・ハンクス演じるミラー大尉にある命令が告げられる。
それは、四兄弟のうち三人の兄を戦争で失ったライアン家の末子ライアン・ジェームズを保護して本国に帰還させるというもの。
ミラー大尉は仲間を連れ、敵の真っ只中にいると思われるライアンのもとへ向かうのだが…。

今作を見て一番疑問に思うのは、なぜライアンだけが特別に救出されるのか?ということ。
詳しくは「ソウル・サバイバー・ポリシー」というアメリカの政策を調べれば分かるのだが、簡単に言うと世論の怒りを恐れたアメリカ政府による政治的な理由のため。
戦場で戦う兵士達は、誰もが誰かの息子であるわけだから、いくら命令とはいえ、ライアンだけを特別視するのは納得いかないはず。実際、任務に付いた兵士達も渋々であった。

以前に見た時は、緊張感ある戦場の描写に圧倒されてしまい、このような戦争の裏側というものに目がいかなかったが、改めて見ると戦争の不条理さというものに改めて気付かされる。

戦争映画なので何度見ても面白いというのは語弊があるが、とにかく濃密な170分。
今作で描かれる作戦自体はフィクションであるとはいえ、第二次世界大戦の記録映像といっても過言ではないほどの価値ある作品だと思う。
yumeayu

yumeayu