橘

プライベート・ライアンの橘のレビュー・感想・評価

プライベート・ライアン(1998年製作の映画)
4.3
命の重さが同じでなくなる、それが戦争。
同じ国の中でもそう、この作品だとライアン二等兵と、ミラー大尉率いる救出部隊の命の重さは同じではないです。ライアン二等兵は絶対に帰還させないといけないけど、救出部隊はいくら欠けてもしょうがない。。。

命の重さが同じでないのは冒頭のノルマンディー上陸作戦でのオマハ・ビーチも。ミラー大尉たちの隊も含んだ第一陣が集中攻撃受けてどんなに数を減らしてても、「後続のために突破口開くぞ」と突撃してる。
ミラー大尉たちがビーチを離れた後に続々と到着する後続部隊。海も海岸も埋め尽くしてて、布陣してたドイツ軍より遥かに多いと思う。
ここを生き延びてる元海兵が作品を観て「ほぼ実戦通り」って言ってたようでした。彼はその後お肉を食べられなくなったとか。
この30分間で感じられないのは匂いだけで、視覚聴覚はもう……地獄です。一瞬で何もかもが絶ち切られる。


すごいと思ったのは、
こんな作品を最近作ってたら「命がけでライアン二等兵を救出しにくるミラー大尉たちの尊さ」みたいな美談にしてしまいそうなところを、
美談だなんて連想出来ないほどの戦争リアリティでぶん殴ってくる世界観です。
尊い死かこれが?
人の死が数でしかなくなる世界には英雄も英雄譚もない。



私事ですが、昨日、長崎旅行から帰ってきました。
メインは長崎市内ではない別の場所だったのですが、長崎へいくのも20年ぶりくらいなので再訪してきました、8月9日関係の場所へ。
この20年の間に亡くなった母方の祖父の弟が、学徒動員でこの日に長崎市内にいたことを生前に知らなくて、改めて平和祈念公園・浦上天主堂・爆心地・長崎原爆資料館に行きました。(ちなみに祖父は沖縄付近の島に出征してて帰還してるものの50歳で亡くなっててわたしは会ったことがないんだけど、叔父はこの兄よりかなり長生きしました)

こう…軍備増強って風潮だけど、戦争で実際に戦うのは政府じゃないからね、と思います。自衛隊も戦うだろうけど数が足りなくて一般市民も戦う事になるのだけれど、それわかってて「戦力を増やさねば!」って主張してるのかなぁ右寄りの皆さん…と思う。
この作品で描かれたオマハ・ビーチ、こういうところに放り込まれるのが戦争なんだけれど、この映画を観ても「強い武力を」って思えるのだろうか…わたしは無理。そもそも、ミラー大尉たちってのちの戦勝国側だし。

原爆資料館を見ても、「戦わなければ」と思える人がいるのか……わたしは無理。
(ポツダム宣言って7月末に出されてるのに日本が負けを認めたくないのか受諾しなかっただけで、両原爆投下時点で既に日本は敗戦していました)


戦争を知らない世代が、平気で戦争を選択出来るようになる。平和のために戦争する。
そうしないための対話が不足した結果…というのでもう手遅れだとは思う。
これを平和ボケと言われるなら、平和ボケで結構!手榴弾はすぐに爆発しないので、ピン抜いてすぐに投げられたやつはすぐに投げ返すと安心です(福岡の知恵)。遠くから投げられてて飛距離あるやつは逃げた方がいい。
逆を言うと、ピン抜いてすぐ投げると投げ返されるのであぶない。何の話?



観たタイミングのせいもあり熱くなり過ぎてしまった……。
今日は6月6日。D-day、ノルマンディー上陸作戦の日です。
橘