享楽

プライベート・ライアンの享楽のレビュー・感想・評価

プライベート・ライアン(1998年製作の映画)
4.5
「シンドラーのリスト」に続くスピルバーグの戦争映画。第二次大戦のノルマンディー上陸作品から始まる残虐な描写から、ミラー中尉の軍隊が政府の命令によりジェームス・ライアンを救出し故郷へと帰還させるサバイバル劇である。戦争映画の中でも最もグロテスクでエグい内容と評されている今作は、本当にその通りで冒頭から終盤までリアルに(鑑賞者であるだけであって実際に人があのように死ぬのを眼前にしていない人間がリアルなどという言葉をここでつかうのは滑稽というかナンセンスそのものだが、あえて使ってみる)人が死ぬ描写が見られる。
縦横無尽に死の可能性が飛び交っているバトル中、ミラー中尉が唖然とし銃撃音や人々の叫びが無と化しスローモーションでただ視覚だけが映る描写が1番恐ろしかったように思える。あれはミラー中尉の主観だけでなく、撃たれてもう間も無く死に至る人間の主観でもあるのだろうか。となると、ミラー中尉は主観的に自分がなぜ生きているのか、疑問に思い、理由らしき理由をただひたすら考え苛まれていたが、その苦悩がそのまま鑑賞者である私にもダイレクトに伝導されてきて悲観してしまった。それほど強力な力が働いていた作品だった。
享楽

享楽