うーーーーん。非常に面白い映画ではある、が、他のスピルバーグ作品と比べると、あまり好きになれなかったかなぁ。すごい映画であるのはもちろん分かる。もちろん分かる。まず冒頭のノルマンディー上陸作戦のシーンの迫力とエグさには圧倒される。海辺に着いてボートの扉が開いたとたん、ドイツのマシンガンの弾がヒュンヒュン飛んできて、米兵がバッタバッタ死んでいく。作戦全体から考えると死んでくれた人が盾になって、後ろの人たちが海に飛び込み、浜に上がって、爆弾ドカンドカン降って来るのくぐり抜けれた者がドイツ兵殺して、上陸作戦成功!ってなるんやけど、いやいやいや、ひとりひとりの兵隊さん、どんだけエクスペンダブルズ! ってちゃんと意識がそっちに向くくらい死に方がリアルでエグい。みんなサラーって死んでってるわけじゃねえんだぞ。人体解体、腹わた飛び出し、苦痛と絶望の悶絶躄地、死の恐怖の怯え、ママーママー、血に染まった波打ち際……とんでもない…まさに阿鼻地獄。で、その作戦を成功に導いたミラー大尉が、軍の首脳から、フランスで行方不明になっているライアン二等兵を探し出し、親元へ帰らせよと、指令を受ける。ライアン家の4人兄弟のうち3人が同時期に戦死し、それを母親に伝える絶望を何とかして和らげなければならないと軍部は考えたのだ。しかし、ライアンを探す途中で、ミラーの率いる小隊に犠牲者が出たりするもんだから、隊員たちのなかに、何でたった一人のために…と納得のいかない気持ちが生まれたりする。見てる我らも、いっぱい死んだけど作戦成功!な冒頭シーンとライアンの扱いの間に確実に存在するこの矛盾はどう消化すべきなのか。子を失くした親は、数とか関係なくみんな死ぬほど悲しんでるだろ。けど、そこに納得のいく答えは出ません。戦争なんて納得いかないことばかりなんだ。自分が行った殺戮を何とか自分で正当化して、無事に生きて家に帰るしかない。けど、そのどうしようもない感じが、若干ドラマ的過ぎる演出とかヒロイックな音楽によってボカされてしまって、感傷的な悲壮感に寄り過ぎになってる気がしてしまったんだなー、この塩梅は100%好みの問題だと思うけど。で、ライアンってお前かよ!っていうまさかのキャスティングにズッコケそうになり笑 けどやっぱイイねーこの俳優。胸がワクワクするカワイさがあるよね。からの、終盤の激烈なバトルシーンは、隊員のキャラがみな把握できてるがゆえに、冒頭とはまったく違い、ドマラチックでエモーショナル。アパムのへなちょこぶりにイライラし、とはいえコイツが一番ふつうの感性だよなーとも思い、でもコイツのせいで死んだ仲間がいることに怒りも感じ、でもどーしよーもないのが戦場なのだと納得するしかない。また戦場で見せた人間的な優しさが、仇になるあまりに残酷な様を見て、何たることよ…と愕然。個人的にしびれるくらい好きな殺しのシーンがありまして、ナイフのシーンね、Listen, listen, stop! って言ったら何とかなりそうな感じが全くしないわけではないのに、無情にも…のシーン。好き過ぎて早戻しして何度も見てしまいました。見るたびにゾクゾクきちゃう。ちなみに、エンディングがまたあんまり好きになれなかったね。まとめるとね、戦争の残虐部分は好きだったけど、ドラマ的な部分が好きになれなかったんだね。スゴイ映画なのはわかりますよ! けど、たぶんもう一度は見ないと思われ。なげーしな。