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プライベート・ライアンのnaoズfirmのレビュー・感想・評価

プライベート・ライアン(1998年製作の映画)
4.1

愛国心🎬

ストーリーは第二次世界大戦中のノルマンディ上陸作戦の裏で行われていた、ライアン二等兵救出作戦を描いた作品でした。作品は王道中の王道戦争映画ですが、一度は誰もが見るべき戦争の現実。映像も所々グロテスクなシーンがありますが、これが目を逸らしてはいけない、私たちが知るべき事実です。冒頭から23分間リアルな銃撃戦が続き、観る側を第二次世界大戦の戦火の中に一気に引きずりこみます。その劣悪な環境下で生きのびようとする人間自体が、もう完全にドラマです。CGやVRの世界では体験する事の出来ない、生々しい臨場感と血の通った人間たちの振れ合いがこの作品の見所の一つだと思いました。

今作の見所は沢山ありますが、一つ目は徹底的なリアルさの追求です。舞台はノルマンディー上陸作戦第二次世界大戦中の1944年6月6日に連合軍によって行われたドイツ占領下の北西ヨーロッパへの侵攻作戦です。最終的に200万人近い兵員がドーバー海峡を渡ってフランス・コタンタン半島のノルマンディー海岸に上陸し、現在に至るまで歴史上最大規模の上陸作戦です。正直これを知るだけでも戦争の恐怖を改めて痛感する事が出来ます。更にその緊張感を余すところなく伝えるのがその演出技法。レンズに血しぶきが飛び散る程の臨場感のある激戦風景、海岸に連なる死体、血に染まった赤い波、臓器等、よりリアルに伝えています。また、劇中に飛び交う銃火器の効果音は、撮影地にもなった実際のアイルランド陸軍による本物の機関銃音を録音し使用したそうです。

二つ目の魅力は愛国心です。これまで勝者の側からしか語られなかった戦争の歴史において、どうしても偏りがちな正義感や愛国心を煽りたてるといった一方的な演出は今作には一切なく、そこにいるのは戸惑いを隠し切れずに一喜一憂している等身大の男たちでした。今作ででスクリーンデビューを飾ったヴィン・ディーゼル演じるカパーゾは、トップアクションスターとなった今では考えられない程の劇中最も人間味溢れる好青年を熱演していましたね!そんな彼から託される父親への手紙は、何人もの仲間に受け継がれていっても必ず赤く血に染まっていく、、あからさまな戦争批判や英雄賛美もなく、ただこの悲壮感だけを粛々と伝え続けるスピルバーグの演出も、観客の心にストレートに響きます。
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