たけちゃん

プライベート・ライアンのたけちゃんのレビュー・感想・評価

プライベート・ライアン(1998年製作の映画)
5.0
胸を張って、故郷へ帰ろう。


スティーブン・スピルバーグ監督 1998年製作
主演トム・ハンクス


シリーズ「映画で振り返る平成時代」
今回は平成10年を振り返ります。

平成10年(1998)はやっぱり長野オリンピックかなぁ。道産子なのでウィンタースポーツは身近なんですよね~。
僕は小中とスピードスケート部だったので、地元の大会にも出ましたが、オリンピックに出る人達の速さはとんでもないの。僕は500mの選手でしたが、正確には覚えてないんだけど、中学の頃で40秒後半だったと思うんだけど、今のオリンピック記録は33秒台ですからね。僅か500mで100m以上の差になる。恐ろしや(笑)

あとはサッカーW杯に日本代表が初出場。
前回レビューした「タイタニック」の記録的なヒット。
黒澤明監督が亡くなる。
そんな年でした。


そして、僕はと言えば、父の癌に転移が見つかり、年明け早々に亡くなりました。大晦日の年取りの夜、病院から一時帰宅して、家族みんなで過ごしたことは忘れられない。
食べることが好きな父が年取りの料理、何も食べられなかった。病気って本当に辛いね( ᵕ_ᵕ̩̩ )

その時、僕の2人目の子となる長男がお腹にいて、残念ながら父には会わせて上げられませんでした。実は、僕も祖父が亡くなる時、お腹にいたらしく、父も僕も長男ですが、顔は拝ませられなかったんです。
僕は息子の子に会えるのかなぁ……。




さて、映画です。
日本での、この年のナンバーワンヒットは「タイタニック」ですが、昨年公開なので、前回、レビューしました。
この年、世界では「アルマゲドン」とトップを争ったのが「プライベート・ライアン」でした。
「アルマゲドン」はレビュー済ですので、今日は「プライベート・ライアン」をレビューします。



戦争映画の傑作と謳われる今作。
改めて観て、思うところがたくさんありました。

オープニングのD-デイでのオマハ・ビーチの描写は有名ですが、この映画の本質はその後にあります。

ただ、オマハ・ビーチの描写を避けても通れないのですけどね。今作と、同じくスピルバーグ、トム・ハンクスが製作したドラマ「バンド・オブ・ブラザース」が、とにかく素晴らしくて、本当に泣けるんです。
「バンド・オブ・ブラザース」はドラマークスにレビュー上げてますので、良かったら見てあげてください(^-^)




さて、その本質部分とは……
少しネタバレになります。



D-デイを生き残ったミラー大尉以下のレンジャーC中隊メンバー。彼らに特殊な命令がくだされます。

それは……
前線にいるライアン二等兵を故郷に返すために、この戦地から探し出して連れ戻すこと。

ライアン二等兵とは……
四人兄弟の末っ子で、3人の兄が、このDデイで亡くなりました。つまり、彼らの母は3人が亡くなったという知らせを一度に受け取るのです。
最後に残る末っ子も、この戦地ノルマンディーにいる。

なので、軍本部は、残る1人までも死なせてはならない。何としても最後のライアンは連れ戻すのだと考え、ライアン二等兵を帰国させるという決断をする。
かくして、ミラー大尉に提督命令がくだされる。


ちょっと聞くと、これ、とても美談ですよね。
息子全てを亡くす母にしてはいけないというのは。
しかし、待って!それ本当なの?

4人の息子のうち3人亡くした母の心中は察します。
でも、それって、数の問題なの?
一人息子を失った母はいいの?
それとも、一人息子は戦地に送らなくてもいいの?

ここに凄い矛盾を感じますよね。
1人を救うために小隊を送る軍の欺瞞を感じます。
映画でもライアンを救うために何人ものメンバーが犠牲になるんです。セリフにもある。
これは僕が大好きな「滅びの美学」とは似て非なるもの。ベクトルが全く違うんです。

マクロで見ると、毎日数多の兵士が犠牲になっているのに、そこには触れずに、ミクロで見ると助けなくてはと思う人間の欺瞞。
これは強烈なカウンターパンチです。
戦争の美談に見えて、実は強い反戦映画です。



一方、当事者のミラー大尉はこう言います。
「戦争という人を殺す任務の中で、人を救う命令を受ける。それが妻に誇れること」だと。

命令に忠実で優秀な大尉に見えていたけど、彼は部下のいない所で嗚咽して泣くような人物。それがミラー大尉でした。
「人を殺すたびに故郷が遠くなる。」
殺すことの罪悪感が失われていく。
自分が自分で無くなる場所。
それが戦場なのです。
その現実を見事に描いていました。

だから、後半、チームのメンバーは命令だから戦うのではなく、誇れる自分に戻るために戦う。彼らはライアンと自分を救うために戦ったんですね。
あのD-デイから僅か7日後のことでした……。


戦争ヒューマニズム映画というキャッチコピーが誤解を生むんです。この映画でスピルバーグは戦争を美談化し、アメリカを讃えてなどは全くしていません。

そんなことが見て取れる本作、やはり素晴らしい作品で、戦闘描写のみに感想が行くのではなく、その描いた本質をぜひ汲み取ってほしいです( ˘ ˘ )ウンウン




さて、ちょっと話を変えて
ライアン二等兵が所属したのは"第101空挺師団"です。
これを聞いてピーンときた人はなかなかの通。
そう、あの「バンド・オブ・ブラザース」で描かれるのが第101空挺師団の姿です。そこではその中のE中隊がメインでしたね。
ノルマンディー上陸作戦で大きな戦果を残した第101空挺師団の姿もぜひ見てほしいです。あのライアン二等兵もその中にいたのですから。



撮影はヤヌス・カミンスキー。
スピルバーグとのタッグで知られる撮影監督ですが、今作のリアルな戦闘描写はさすがのひと言。
素晴らしい仕事でしたね。


あと、音ネタとして(^-^)
エディット・ピアフが印象的に使われていましたね。
映画が1945年の話なので、まだ「バラ色の人生」や「愛の讃歌」とかは発表されていませんが、「バラ色の人生」は占領下で書かれたものです。
この年、ピアフは30歳。
レジスタンス運動に参加して、多くの命を救ったそうです。ピアフの自伝映画「愛の讃歌」もレビュー済ですので、よろしければ見てください。

「Tu es partout」は知らない曲でしたが、「あなたは私の一部~」と歌う恋の歌でしたね。
あと「C'etait une Histoire D'amour」も使われていましたが、どちらも1943年くらいの録音のようです。
占領下のフランスで国民の癒しになっていたのでしょうね。素晴らしい!


さて、最後にひと言。
フーバー(Fuck Up Beyond All Recognition)\(^o^)/

では、次は1999年、平成11年でお会いしましょう!