冒頭で約20分続く、「ノルマンディー上陸作戦」の戦闘シーンで繰り広げられる凄惨なリアリティに圧倒されます。敵の厚い弾幕の中に次々と歩兵を送り込む人海戦術のど真ん中に、まるでポンと置き去りにされたような臨場感が凄いです。高密度な恐怖を疑似体験させられている感じ。
初めて鑑賞した時は、ここまでのリアルな再現に疑問を感じて、鑑賞し続けるのに抵抗がありました。リアル一辺倒な映像表現は、…なんでいうか恐怖を力技で押し付けられている気がしたのです。
今となれば、このシーンで良かったと思っています。時代と共に戦争の記憶は確実に薄れていきますからね。戦争の恐ろしさを直球で伝えてくれる貴重な作品と思うようになりました。
「戦争の悲惨さを風化させない」というスティーヴン・スピルバーグの気概を感じるようになりました。
誰もが耳にした事あると思う「ノルマンディー上陸作戦」。第二次世界大戦で連合軍が仕掛けたことで戦局が一変し、ドイツを敗退に追い詰めていった学校の教科書でも出てくる有名な作戦です。
しかし、教科書でその惨劇を知ることができても恐怖はなかなか伝わってきません。スピルバーグがリアリティに満ちた作品にしたことはとても意味あることだと思いました。
米軍がノルマンディを突破してから以降は、ミラー大尉(トム・ハンクス)が率いる少人数の特命チームを軸にした、よりストーリー性のあるロードムービー調へガラリと変化します。
遠く離れた内陸部のどこかにいるはずのライアン二等兵(マット・デイモン)を探し出すトップダウンによるミッション。このために敵国のスナイパーが潜む村や空挺師団のランデブー拠点、敵の対空レーダー基地などなどを通過しながら敵地を奥へ奥へと進んでいく…。ハラハラドキドキ見応えのあるシーンが続きます。
凄惨な場面を扱いながらもヒューマニズムも感じさせる娯楽作品として見事にまとめ上げている作品だと思いました。