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プライベート・ライアンのcinemakinoriのレビュー・感想・評価

プライベート・ライアン(1998年製作の映画)
4.9


“私は気が進みません”

“気の進む任務がどこに?”









初見から、間違いなく20年以上は経つであろう名作中の名作戦争映画の金字塔を再鑑賞。


先ず、極私的な話で恐縮なのだが、2ヶ月ほど前から頚椎椎間板ヘルニアを患い、今日は如何にもこうにも痛みがヤバ過ぎて、完全に首を固定して動けない状態だったので、寝るには目が冴えすぎて居るのと、横になると逆に激痛で寝れるわけもなく。
そんなこんなで長尺の名作を再鑑賞という日に決めたという流れ、そんでもって感想をフィルマに落とし込む事に。







戦争映画の代表作である事は間違いない。




第二次世界大戦中の【ソウル・サバイバー・ポリシー】をリアルに描き、娯楽エンタメとは一線を画したスピルバーグの熱意と拘りが尋常じゃないこの戦争映画は、冒頭30分のノルマンディ上陸作戦のシーケンスがあまりにも有名で、オープニングにしてクライマックスと言われるほどのインパクトとリアリティで“戦争”の凄惨さが凝縮されており、今も遺産的名シーンとして語り継がれているのは言わずもがな。


その後のライアン救出作戦に至っては共感を得られないという声も少なくは無いのだが、正にあれが戦争の無慈悲さであり、現場であり、リアルなのでは?と個人的には胸を抉られる。
前述の【ソウル・サバイバー・ポリシー】が、建前上は生き残った戦士の家族の血統の存続とでも言えようとも、あくまでも軍事的美化、英雄譚としてのサインボードに過ぎないというプロパガンダである事もしっかり劇中で描いている。
これこそが戦争の闇であり無意味さなんじゃないだろうかとスピルバーグは強烈にメッセージとしてこの作品で訴求している。


兵士一人一人の人間性の繊細な描写についても、掘り下げているようで掘り下げてない中途半端な点も、戦場の容赦ないリアリズムを表すのにはこれ以上ない程の“厚み”。

ヘタに主人公ジョン・ミラー大尉含む兵士や、ライアンの心情ストーリーや繊細なヒューマンドラマを絡めると、エンタメ寄りになってしまって戦争の凄惨さや容赦の無さがここまでリアルに描かれなかった気がする。

常に死と隣り合わせの戦場の緊張感、銃声、戦車の轟音、舞う粉塵や砂埃、そして血飛沫と兵士たちの悲痛な叫び。
感じられないのは“臭い”くらいなもので、その妥協のない臨場感は他の戦争映画の比にならない事に異論を出す隙もない。


1998年作品にも拘らず、今観てもその圧倒的な本物感はどう捻くれて評価したって凄いとしか言いようがない。


個人的に、映画での高評価基準には大きく分けて二つのタイプがある。
一つは超極上のエンターテインメントを突き通した映画。
もう一つは、死ぬまでに“観ておくべき”遺産的価値のある映画。


この作品は勿論後者。














“1人殺すごとに故郷が遠のく気がする”
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