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プライベート・ライアンのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

プライベート・ライアン(1998年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

ノルマンディ上陸作戦は成功に終わったが多くの死傷者を出した。生き延びたミラー大尉に戦場にいるライアン二等兵を救出せよという指令が下る。ライアンの3人の兄が全員死亡し、ライアンだけでも生きて故郷に返そうという軍の判断だった。ミラーの小隊は生きているかもわからないライアンを探すため戦場へと赴く…。

序盤のノルマンディー上陸作戦の戦闘シーンはまさに圧巻…。
いや、狂気の沙汰である。
退路も無い血の海地獄の中を、ただひたすら前に進むしかない。
弾に当たるか当たらないかは全くの運。
伏せた兵士の目線で、海面に近い位置でのカメラワークに翻弄され、酔う。
このすさまじい臨場感。
戦場に投げ出されるとはこの感覚だろう。
「シンドラーのリスト」以上の戦争の残酷さ。
スピルバーグ監督はサディストか?とすら思った。
「戦争に行きたくない…」と、誰もが思う。
公開当時、劇場の大スクリーンで見た私は、吐き気を催した。

なぜ、ただの農家の倅であるライアンを、ほかの兵士の命を危険に晒してでも救助せよという命令が下されたのか疑問だったが、「ソウル・サバイバー・ポリシー」という、従軍している者の身内の中で、唯一の生存者は帰国できるというルールがアメリカにはあることを、この映画で初めて知った。

それは人道的で良いことなのだが、「一人の命を救うために8人の命をかける」ことは、どうしても理不尽に思えてならない。

「この戦場で唯一正しい行いがこの任務で、その任務を果たせば誇りを持って故郷に帰れるのだ」と語るミラー大尉。

地獄のような戦場においても、決して人間性を失ってはいけない。
それはとても難しいことだ。
ノルマンディー上陸作戦を見た後では尚更そう思う。

戦争の狂気の中で、ギリギリ保たれる人間性。
私には無理かもしれない。
8人の兵士のような人道的な任務がなければ、誇り高くはいられないだろう。
劇中に登場するアメリカ兵に助けて貰ったにも関わらず、自分が優位に立つと襲い掛かるドイツ兵のように、きっとどこかで人間性を見失うに違いない。
尚更、「戦争には行きたくない」と思う。

映画の始まりと終わりに戦没者の墓や星条旗が映る演出に「アメリカのヒーローを讃える映画なのか?」と、プロパガンダに見え、少し冷めてしまうのが唯一の難点。

しかし、「戦争に行きたくない」「自分には無理だ」と思わせることに、この映画は成功している。
記憶に残る反戦映画である。
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