海

スクールズ・アウトの海のレビュー・感想・評価

スクールズ・アウト(2018年製作の映画)
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手を握ること。怖いのだ。高く高く飛んでいってしまいそうな体が、あるいは深く深く沈み込んでしまいそうな体が。変わってしまうこと?このまま永遠を誓わされてしまうこと?判らない。首を絞めでも、引っ叩きでもして、目の前にある死や痛みへの恐怖について思考していないと、いたるところから忍び寄ってくる生き続けることへの恐怖に拐われてしまいそうになる。あらゆることが怖いと口にしたあの夜から何もかもが方向を変え走り出していたとしても決しておかしくはなく、わたしたちに生きる意味があるのかと考えるときも、どうしてもそんなものはない、生きるだけで誰かを傷つけ、命を殺し、毒を振り撒く、そこに何か美しい運命があるとするなら教えてほしい。ただ出会ったときに、手放したくないと思える映画があって、生きたいと思える生き物があるということだけは本当で、そういうことがもしも、海よりも泉に近いものなのだとしても、証拠はなくとも真実なのだと思う。悲しいことは増え続ける、そのうち墓地は足りなくなるし、毎日いろんな場所で虐殺は起きている。でもわたしたちは、かならずしもそれらに鈍くならなくては生きていけないわけではない。きみに起こる悲劇はわたしに起こる悲劇だとわかっていてほしい。大勢の生き物の血で汚れきった波の中に、バナナフィッシュを見つける幼子が居る、きみがここにとどまるために、引き金よりハンドルよりその手に触れて。
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