蛇らい

フリー・ガイの蛇らいのレビュー・感想・評価

フリー・ガイ(2021年製作の映画)
3.7
楽しさの持続性と、レイヤーの深さを見事に同期させ、仮想世界でしか語れないストーリーに帰結していた。仮想空間と現実世界の識別と融合がしっかりとなされ、視覚的な楽しさ以外にも気配りがされてある。音楽に関しては、ここぞというときの外しの選曲による異化効果が機能していた。

ディズニー的という言葉が、かつての認識からアップデートされ、いわゆる銭ゲバ、コマーシャリズムの権化として扱われるようになってしまった。タイカ演じるゲーム会社のトップとしての振る舞いにて、ディズニーの映画との向き合い方の批判を楽しく描いている。

『スター・ウォーズ』シリーズやMCUのネタをわざと下品にも見える様にバンバン使用し、ディズニーが20世紀スタジオにしてきた仕打ちを逆の立場から発信する会心のアンチテーゼに拳を突き上げられずにいられない。人気キャラクターながら、未だにMCUに合流できていない『デットプール』シリーズのライアン・レイノルズがそれをやってのけるのも勇ましく、可愛らしい。『ナイト&デイ』オマージュも最高。

誰かが定めた世界(社会)の上で踊らされる人々を滑稽にも真実味を持って現実とリンクさせ、不可抗力という目隠しを外してくれる。少なくとも、アイデンティティを掴み取ることが大きな一歩なのではないかと思わされた。

オリジナル脚本でここまでの完成度に仕上げた20世紀スタジオの意地と、劇中の舞台である「フリー・シティ」のシステムの開発者(映画人)へのリスペクトが詰まっている。一見、すっとんきょうの様で、実はおどろおどろしさまで感じるほどの切実さに呆気に取られた。
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