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フリー・ガイのYOUのレビュー・感想・評価

フリー・ガイ(2021年製作の映画)
4.1
ショーン・レヴィが監督を務めた、2021年公開のSFアドベンチャー。
自分がオンラインゲーム「フリー・シティ」のモブキャラである事に気付いた主人公のガイがゲームの世界に数々の波乱や革命を巻き起こしていく様子を描いた本作、主演のライアン・レイノルズはこの作品の製作にも携わっているとのこと。自分を含め本作を評価する人の多くは「想像を遥かに超えて面白かった」とか「思ってたよりも何倍も深い映画」だとか、とにかく予告からある程度予想出来る範囲のギミック的楽しさを”ストーリーがしっかりと上回ってきた”ことに対する驚きと喜びが隠せないと思います。まず予告からも伝わる「ギミック的楽しさ」の部分として真っ先に挙げられるのは、本作が「バーチャル世界を舞台としたSFアドベンチャー映画」だということ。『レディ・プレイヤー1』や『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』、また現在公開中の『スペース・プレイヤーズ』など現代ハリウッド超大作の一つのトレンドとも言えるこの要素だけで、ストーリー云々は置いといても一定量の面白さは余裕で担保されています。しかし本作がそういった表面的な面白さに留まっていないその要因は、『トゥルーマン・ショー』に代表される「虚構世界での孤軍奮闘モノ」のストーリーと、そこから提示される「万人に向けたポジティブなメッセージ」だと思います。特に中盤、主人公がどれだけ頑張ってもどれだけ知恵を絞っても結局”本物の人間になることは出来ない”という事実を突き付けられるシーンはあまりにも切ないです。ここを以て本作では「誰にだって限界はあり、夢を断念せざるを得ない事だってある」という、ファミリー向け超大作とは思えない程に大人でビターな”現実”を思い知らされます。しかし同時にこの作品は我々に向かって「だからと言って自分が社会のモブキャラになる必要は無い」と力強く断言してくれます。多くの観客が心を打たれるのはまさにこの部分であり、自分もまるであの群衆の中で一緒にガッツポーズしているような気分になりました。気付けばクライマックスではガイのことを心の底から応援していましたし、自分はこれこそが「万人向けエンターテイメント」と呼ぶに相応しい作品だと思います。

「人生の主役はいつも自分であり、自分自身が切り拓いていくものだ」というメッセージそのものは古今東西さまざまな作品で扱われているものですが、何より本作の場合は前述したようにその直前で一旦”現実”を突き付けられている分、このありきたりなメッセージこそがより一層深く心に刺さります。そしてこの物語構成からも個人的に本作は『トゥルーマン・ショー』に対する”今日的なアンサー作品”であるとも感じました。『トゥルーマン・ショー』のラストで提示されていた「社会の在り方に捕らわれずに行動し続けることで、真の自由を切り拓くことが出来る」というメッセージをある種反転させるような形で、本作は「身の程や限界を弁えることは決して恥じるべきことではなく、自分自身の人生を満喫することこそが最も大切なんだ」ということを観客に投げ掛けています。個人的にはこちらの方がより親しみやすさを感じますし、エンドロールが流れる頃には作り手に対する感謝の気持ちでいっぱいでした。当然観る人によって受け取り方も多種多様だとは思いますが、とにかく今観るべき一作であることは間違いありません。ありがとう!!


































































タイカ・ワイティティの暴れっぷりも必見。
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