ぽち

ウルフズ・コールのぽちのレビュー・感想・評価

ウルフズ・コール(2019年製作の映画)
3.3
ストレートな潜水艦物(窒息系映画)ではなく、核戦争の脅威などをメインにおいて、潜水艦物としてはひねった内容が新鮮な作品。

海軍の全面協力のおかげか、艦内のリアリティや、その戦い方などの描写も素晴らしい。

これだけ技術が発達しても最終的に判断を下すのが人間の耳ってのが意外だった。データを蓄積すれば人の耳の数百倍は精度が高くなりそうなものだが、臨機応変ができないということなのだろうか。

ストーリーは緊張感があり良かったのだが、どこか既視感が・・・
「一度大統領が出した核攻撃命令は、本人でさえ覆せない」ってところと、あの手この手で中止させようとするプロットが「未知への飛行」と同じだ。ってことは「博士の異常な愛情」とも似てるってことだな。

でも両作のようにバッドエンドではない所が、ちょっとぬるい気がする。
「博士の異常な愛情」はシニカルな笑いに包まれての人類滅亡だし、「未知への飛行」のラストの大統領の決断は本当に心を締め付けられるものだった。

今作では助かってよかったね、で彼女とイチャイチャってのはハッピーエンド風でいまいち。あ、でも助かってからをセリフ無しの音楽で、主人公の耳の状態を現していた演出は良かった。

コミック作家出身のアントナン初監督作品ということだが、今後に期待だ。
どんな漫画を描いていたのか気になり調べてみたら、風刺漫画風のデフォルメされた絵だったのが意外。てっきり大友とかメビウスとかの絵を想像していたのだが・・・・


余談。
ちらっと、他の方々のレビューを見たら
「命令を撤回できないなんてありえない」とかあったけど・・・・

あれ?「一度大統領が出した核攻撃命令は、大統領本人でさえ覆せない」って周知の事実じゃないのかな?
一番階級が高い人の命令を、それより階級が下の人が覆せないのは当たり前。
大統領命令は大統領以外覆せない。と普通は思う。

しかし、超重要事項である「核攻撃」は敵国がどんな手を使ってくるのか想像を超えるらしい。
もし目の前に大統領がいて中止を宣言しても、一度出された命令は取り消せないそうだ。

そんな馬鹿なと思うかもしれないが、敵国スパイに大統領家族がさらわれているとか、スナイパーが狙ってるとか、胴体に爆弾を括り付けられているとか・・・・・何があるかわからないのだ。

そのために報復措置としての核攻撃が中止されるってことは、戦争に負け自国が滅ぶということになるらしい。

確かに、中止命令を出させることが出来る状態さえ作れば、盛大に核攻撃ができるわけで、報復が無いので完全消滅させれば大勝利。
となれば、防衛とかミサイルの性能とかより、「中止命令を出させる」に全精力を傾けた方がコスパが無茶苦茶良い。

そうならないため命令は撤回できないということだ。

常識です。
ぽち

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