n0701

黒い画集 ある遭難のn0701のネタバレレビュー・内容・結末

黒い画集 ある遭難(1961年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

三人は夏の鹿島槍ヶ岳に登山に出掛ける。
寝台列車に乗って、十分な睡眠を取り、休憩を繰り返しながら三人は山頂を目指す。

すると、急な悪天候により周りが一切見えなくなるくらいの霧が出て、もう一歩で山小屋というところで引き返すことになる。
それから来た道を戻っていた三人だったが、実は道は大きく外れ、元の道ではない別の山に足を踏み入れてしまったのだった。

そのまま突き進む三人は、やがて獣道に迷い込む。そのうちの一人は早くから疲労困憊し、山道は慣れたものであったはずなのに、その頃には虫の息であった。

リーダー格の男は、二人を残し、助けを求めに下山する。

しかし、肉体的にも精神的にも疲れ果てていた男は急に発狂し、服を脱ぎ捨てては走り出し、急斜面から落ちて死んでしまった。

彼らの山登りは一名死亡という惨憺たる結果を残し、終わったのであった。

しばらく後、リーダー格の男の元へ亡くなった男の姉が従兄弟の男と一緒に訪れる。そして、花向けをするため、もう一度山を一緒に登ってくれないかと持ちかける。

男は危険な冬の山道を、しかも友人が死んだ山道を登ることに渋りつつも、承諾する。

死んだ男の従兄弟の男は、少しずつ少しずつ山登りを誘った経緯を告げる。

そして、山頂に辿り着いた時、従兄弟の男はリーダー格の男が極めて計画的に殺人を犯したのではないかと告げる。

なるほど何度も休憩させ水分を取らさせ、誤った道を歩かせ、悪天候は予測できたはずなのに無視し、その結果、凍えさせたことは、殺したと言っても過言ではない。

だが、動機もなければ、疲労困憊していた理由も謎のままだ。それに何より、死んだ男は十二分に山登りには熟知していたはずである。

それが何故「殺人」と断言できるのか。

一笑に付したリーダー格の男だったが、山頂から下山するにあたり、今日中には戻らねばならぬからと急斜面を降りると申し出る。

それに従兄弟の男も一緒に付いてくることを承知する。

降り始めて少し経った後、リーダー格の男が死んだ男の従兄弟より少し早く岩壁を下り始め、さらに、彼に語りかける。

「動機は、あいつの妻との不倫です。」男の妻が5日間程外出した日、死んだ男と温泉旅行に出かけていたのであった。

そして、それを知っていることを行きの寝台電車の中でそれとなく告げたことで、死んだ男は眠れなくなったのだった。

それが疲労困憊の原因であった。

リーダー格の男は、犯罪の動機について語りかけている最中、死んだ男の足元の雪を削り、罠をしかけていた。

従兄弟の男は、彼の動機を聞きながら崩れた雪に足をかけ、踏み外したと同時に急斜面から落ちていった。数百メートルもの距離を叫びながら、叩きつけられ、落ちていった。

その姿を目にしながら、微笑して煙草に火をつけるリーダー格の男。

すると、彼の頭上から雪崩が起こり、彼もろとも全てを埋め尽くした。

彼らの死は全ての謎を解明させないまま、静かに終わりを告げたのであった。
n0701

n0701