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トムとジェリーの教授のレビュー・感想・評価

トムとジェリー(2021年製作の映画)
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感想としては、苦手な「カートゥーン・アニメ」で2時間弱は大変だなぁと思っていたのだが、まぁ、楽しかった。
冒頭の音楽的な高揚感と、実写+2Dアニメーションの組み合わせの心地よさで抜けが良い。
いわゆる「スラップスティックコメディ」の基本的な衝動も忠実で楽しい。

比較的都会的な映像ルックと、慌ただしさの中にしっかりとテンポが計算された編集センス。
オリジナルに忠実なトムとジェリーのキャラクターと、クロエ・グレース・モレッツやマイケル・ペーニャの俳優的魅力のフィット感など、とにかくストレスレスに観ることができる。
古臭くなりそうな素材を、オリジナルの世界を大きく壊すことなく現代的にアップデートされた世界観は見事。

ただ。やっぱりメインストーリーのご都合主義な展開にはもう少し揺らぎや葛藤が欲しいとは思ってしまう。
それぐらいにストーリー自体に魅力も多少は感じていたからこそもったいない。
盲目の、スティービー・ワンダー気取りのトムの嘘と、ケイラの嘘の物語的なリンクや、トムとジェリーの「ツンデレ」的な関係性の描写はちゃんとほのぼのしてしまうのに、比較的「善良さ」に物語が傾けば、途端にキャラクターたちの人間性が喪失するほど極端に何もかも許してしまうので、不気味に見えてしまう。

そもそもが根幹にある動物たちのケンカやイタズラが災害に並みに破壊し尽くし暴れ回るし、そこで展開されるホテル内の騒々しさに正直ゲンナリしてしまった。
そこには妙に現実的な「虚偽」も描かれているぶん、余計に罪深い感じ悪さを残してしまう。
ケイラの奮闘に相応の「チャンス」にホロっとした矢先に、一応の帳尻としてペリーボトムが出てきたときには欺瞞的な印象と同時に一気に作品の熱量みたいなものも冷め切ってしまい。エンドロール後の大オチがとても印象の悪いものになってしまった。
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