Emma

朝が来るのEmmaのレビュー・感想・評価

朝が来る(2020年製作の映画)
4.5
ネトフリで今見る人は必ずエンドロール後まで見てください!要らん広告をエンドロールで流すネトフリなので、スキップしたくなりますが、エンドロール後の言葉を聞くと聞かないとでは全然印象が違いますので。。大事なことなので、先に書いてみました。

作品は…始まってからほぼずっと泣きながら見ていました。

印象に残ったのがベビーバトンで我が子を養子へ出すことを決めた若い母親の劇中の言葉。「子供を元々産めない人たちがいるとテレビで見て。その人たちが何もかも手にしようとしてるみたいで。妬んでしまう」産むことは出来ても、育てることは出来ない。育ててくれる養子縁組の夫婦には感謝でいっぱいという気持ちばかりではいかない本音がこぼれたこの言葉が非常に印象に残りました。

だったら産むなとか、育てられもしないのに子供を作るなとか、彼女たちは散々そんな言葉を浴びせられたかもしれないけど、家庭に居場所を見いだせずさまよう町で騙され風俗で働き、望まぬ妊娠をし…など一人一人辿ってきた背景は異なって、それでも母親となってお腹に命をさずかった以上、産んではい、おしまい、とはいかない割り切れない思いがあるのは、そりゃそうだよな、と。人間はそんな簡単に割り切れる生き物ではないもんな、と感じました。上手く言えないけれど。

それでも、永作さん演じる育ての母と井浦さん演じる夫が本当に素晴らしくて、不妊の苦悩の日々も事細かに丁寧に描いているので、やっと子供を抱き大切に育てていたのに、産んだのは私なんだからと、ひかりが現れるのはずるいし、やめてほしいし、邪魔しないでと思ってしまう自分がいました。

それはたぶんきっと、子育てを今実際にしている私からすれば、妊娠や出産そのものはもちろん大変だけれど、いや、本当に大変なんだけど、育てるのはもっともっと長い時間のかかる、大変なことだと感じるからかもしれません。その大変で愛しい日々に、ひかりは居なかったのだから、育ての親に突然返してなんて言うなんて、と思ってしまいました。

だけどこの作品の稀有なところは、前半後半で見事に育ての親と生みの親のストーリーを丁寧に繊細に描くところなのです。どちらかを悪者にするのでもなく、たんたんと、ドキュメンタリーのように。

ひかりが子供を授かるまでの生活とその後の変貌ぷりには心がヒリヒリと痛みました。あまりにリアルで、わたしも人生のどこかでひかりに会っているんじゃないかと思うほど彼女の痛みが伝わってきました。
ひかり役の蒔田彩珠さん、最近見たどんなお芝居よりも心動かされました。鮮烈でした。彼女以外、ありえないなと思いました。素晴らしいの一言。

何を感じるかは見る人によって異なる作品だと思います。アサトくんはこのご夫婦に育てられて本当に幸せだということ、そして愛する人との間に彼を授かり産んでくれた広島の母ちゃんがいることもまた、アサトくんにとって、とても幸せなことだなと私は感じました。そして永作さん演じる育ての母の器の大きさ、愛情深さが太平洋レベルです。。

上手く言えないけれど、育ての母とか生みの母とか、かたちは違えど、愛情に優劣は無くて、測れもしなくて、どちらも本当に深いんだということ。今も世界のどこかでこういった家族のかたちを作り毎日を生きている人達に、心から幸あれと手を合わせたくなる1本でした。
Emma

Emma