髭ゴリラ

朝が来るの髭ゴリラのレビュー・感想・評価

朝が来る(2020年製作の映画)
4.7
想像を遥かに超越してきた...

河瀬監督のとんでもない演出と情熱を
頭からつま先までしっかり感じ取れる作品。

ただただこの作品は素晴らしい!!!

涙が止まらない...
胸が痛い...
刺さる...刺さる...

観ようと思うも心の準備が出来ずやっと鑑賞。
そして鑑賞後、2日置いてからのレビュー。

感情が言葉にならず、なんて書けば良いのか。

箇条書きで述べて整理することに。

①ドキュメンタリー要素を多く含む演出

「ベビーバトン」という団体と特別養子縁組が
大きく関与するストーリーなのだが
そこに出演する人たちが
実際に養子縁組で子育てをしている人たち。
演技で述べているのではなく、実体験をありのままに
語っているのが、その思いが胸に突き刺さりすぎて
「やばいやばい、涙止まらない...!!」
と慌てるほど溢れてきた。

そのシーンの撮影は河瀬監督が直接カメラを
回していたそう。

終始、瀬々監督や是枝監督のような
「ゆらぎ」を感じるカメラワーク。

これは言葉に出来ない感情なので、
どうかその目で見て頂きたい。

②人間関係における確執や愛情がリアル

①とも大きく関わる内容なのだが
親子関係や恋人、友人などの会話や態度
目のやりどころなどまでがあまりにもリアルで
ずーーーっと引き込まれる。

その理由を河瀬監督のインタビューなどを
調べてみたところ、「役を積む」演出をされたとのこと。

・実際の撮影までの間に家族は一緒に生活
・恋仲になる人とは撮影まで会話させない
・特別養子縁組の代表役の浅田美代子さんには
制度のことを徹底して叩き込む
・劇中には無いシーンとシーンの間の部分を
敢えてカメラを回さずに演技させる

などなど、映画を撮影するための背景を知って
この演出の凄まじさと、何故ここまで心に届いてくるのかが納得出来た。

③河瀬監督の必殺技「光と自然美」

「あん」や「光」でもそうだったが
自然美と光の取り込み方が芸術すぎる。
海や夕暮れ空などのワンカットで心が持ってかれる。

特に今作品は、
同じ海でも「東京芝浦」と「広島」の対比
ありのままの自然と無機質やビルたちの対比
などを大いに感じることで、より自然美を美しく感じた。

④配役の素晴らしさ。完璧。

永作博美さんって八日目の蝉の印象が何よりも強かったけど
今作の表情の魅せ方は圧巻された。
表面的な部分と内面的な想いの映し方が
あまりにもリアルだった。

浅田美代子さんは、本物の代表者ですか?と
問いかけたくなるほど繊細な演技。
語り口や表情に、その慈悲深さが表れていて
言葉にせずとも想いが溢れて伝わってきた。
この制度と実際の家族と交流されていることが
演技にも多く表れている。

そして今作は何よりも蒔田彩珠さん。
是枝監督作品常連のユマニテ女優。

演技というよりも、等身大の女の子の部分
演技では無いリアルな想いが表情と仕草に表れている。
それ故に途中からドキュメンタリーを観ている感覚に
なるほどで、心を鷲掴みにされた。
この女優さんは只者じゃ無い。圧巻です。

とにかくこの映画は理屈ではなく
五感全てで体感的に捉えるべき作品だと思う。

重たいとか苦しくなるとか
ストーリーの展開やオチがどうとか
そういう単調なことではなく
感じるべき作品。

これからも何度もこの作品を自分の中で
巡らせたいと思う。
髭ゴリラ

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