劇場出た後、歯の根が噛み合わなくてガチガチ言ってるのに気づいた。凄まじかった。
子どもを授かれなかった夫婦の話も、若すぎて育てられなかった少女の話も、今まで見すぎるほどに見てきたはずなのに、そのどれもと違っていて河瀬直美、怪物か。
永作さんも新さんも、美男美女であることには違いないのに見目の麗しさではなく年を重ねたことによる内面の豊潤さ、思慮深さが滲み出る夫婦のあり方に説得力がありすぎて、2人が赤ちゃんを迎える時の、心から溢れる喜びに、感情がバーストして嗚咽を堪えきれず、劇場内に変な声を轟かせてしまいました。
一方で、育てることができなかったひかりもただ奪われ、失うだけではなくて、本当は愛されて慈しまれていたことを丁寧に丁寧に掬い取ってくれている。
荒んでいくごとに濃くなるアイラインと乾いた唇が対照的で、胸が苦しくなる。
本来ならモブでいいところの2人に、若葉竜也と青木崇高を采配する監督、まじ天才では??若葉くんの負け知らず、まだまだ更新中じゃん…!!
佐都子と清和が旅館で見たベビーバトンの番組から作り込まれ方が容赦なくて、監督お得意のドキュメンタリータッチが全編わたって活かされまくってた。
心の中を見透かすように徹底的に対象に寄って、見ている側も幻惑される。
浅田美代子ってこんなに素晴らしい女優だったのね…
ウルトラCもなく、ただただ2組のメモワールが綴られるだけなのに、とってもリッチなフルコースを堪能したような贅の限りと、ぐったりするような消耗感。
是枝、黒沢、北野と並んでそりゃ4Kだわねと思うと同時にこの人が真打ちでしょ、と思うほどには、女性の力を確信したのでした。