「血縁?そんなもの超越している。」
主要キャストではない登場人物のひとりが劇中で発した言葉。
この一言でスイッチが入った。
う〜ん。すごいヘビーな作品。
鑑賞後 自宅まで20分かけて歩くのだが なんか両肩に10kgのお米を抱えて歩いているみたい。
家に着いたらグッタリ。肩が凝った。お腹が空いた。
子供が授からない夫婦。望まぬ子供を授かり 自ら育てる事が出来ず手離す少女。
そして彼等を取り巻く人々。
正直 よく聞く話。
この手の物語は何度も映画化されているし TVのドキュメンタリー番組でもよく観る。
しかし、この使い古された題材を河瀬監督は得意のドキュメント調の手法と女性監督ならではの視点で優しく 時にキツく作品に焼き付ける。
所々に四季の移り変わり、都会の冷たい夜景、哀しい夕焼け、動物達の生き様など、太陽の鼓動、地球の呼吸を巧みに入れ込んでくる演出はさすがの一言。
構成も実に見事!
この夫婦だけを中心人物として描いていない所がいい!
私なんかは子供が授からないのは本当に不幸だとは思うけど それでも『都会の超高級マンションに住んでて 仕事も収入も安定してるし 結構 幸せなほうじゃん。』なんて思ってしまうひねくれ者。
そんなところに この少女をもう一人の主役として細部までこの子の悲しみ、愛、苦しみを描いているのに 救いを感じた。
そう。この少女の方がずっと可哀想だ! というように 双方の違った哀しみを交互に描写してるのが、この作品を単なる『御涙頂戴』映画にしてないところに感銘を受けた。
ただエンドクレジット終盤のあの演出だけは ちょっとやり過ぎ。
要らなかったかな。狙い過ぎです。
役者さん達の抑えた控えめな演技も自然体で作品のバランスを崩してなく安定していて観ていて心地よい。
特に少女を演じた あの子 すごかった、期待の大型新人現る。って感じ。
ここまでヘビーな演出にこだわったのなら いっそのこと3時間くらいの大作にして もっとグッタリとさせてほしかった。
とは言え 本作は見応えたっぷり!
いや、これでもたっぷり過ぎました。
気軽にフラッと映画館に立ち寄ってなんとなく観る作品では無いです。
かなりの心構えが必要です。
2020年10月30日
TOHOシネマズ池袋screen 1
💺76 席
客入り 60人以上、ほぼ満席。
「007」「ナイル殺人事件」「ブラックウィドウ」など なんかまたハリウッド大作の公開延期の波が始まり出しました。
シネコンのラインナップはアニメと邦画ばかりになってきました。