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女囚701号 さそりのtakのレビュー・感想・評価

女囚701号 さそり(1972年製作の映画)
3.2
#「キル・ビル」のルーツを探せ
(その1)

 70年代の東映アクションもの・・・僕にはおそらく最も馴染みの薄い時期の映画。そして”女囚もの”。僕ら世代だとリンダ・ブレアの「チェーン・ヒート」があるけれど、暴力・エロ満載という作風は好んで観るものでもなかった。だいたい女性がいたぶられる映画って嫌いだから。しかぁし!本作はまさにそれ。恋人だった刑事に騙されておとり捜査に利用され、ボロ布のように捨てられた主人公松島ナミ。刑事に包丁で斬りかかったところを捕らえられてしまう。彼女は復讐に燃えていた。刑務所の中での仕打ち、扱いはこれでもか!というくらいに陰湿。普段ならもう十数分で投げ出してしまうところかも。

 でも面白いのね、これ。デビュー作だった伊藤俊也監督は”劇画調の演出”ということで数々のアイディアを盛り込み、飽きさせない。劇画のコマ割りの様にアングルが斜めだったり、下から見上げたり、明暗がやたらと強調されていたり、時折入るクローズアップが妙に印象的だったり。時代が時代だけに、反権力的な描写があるのも見逃せない。冒頭君が代をバックに刑務官の表彰が行われる場面。ナミの脱走で式はぶち壊しになり、賞状は無惨に踏みつけられる。ナミが悪徳刑事に処女を奪われる場面、白いシーツに広がる赤い血は日の丸を思わせるじゃない。女囚がいきなり髪逆立てて襲いかかったり、派手なライティングがあったりと、まるでホラー映画。

タランティーノのアイドル梶芽衣子はひたすらカッコいい。次々と降りかかる危機をクールにかわしていく姿が何より面白い。クライマックスに出てくる黒一色の服装につば広の帽子姿!一度見たら忘れないね。ユマ・サーマンがこのファッションやったら笑っちゃうぞ。作業所の奥でサイコロ博打しているところは任侠映画まんまだし、暴動(「アバレをやるよっ!」)を起こす女囚達に「しずまれーっ!」って時代劇じゃないんだからさ。

 刑務所長や事件の黒幕の薄暗い部屋に差し込む照明は「スケバン刑事」の暗闇指令の部屋みたい。そういえば「スケバン刑事」が製作されるとき、アイドル路線でいきたいフジテレビ側と東映は意見が違っていたらしい。東映側が求めていたのは、この「女囚さそり」の空気だったのだ。マッポの手先にされた女子高生の哀しみと悪への怒り・・・うーん、なるほど納得。ビデオ観ている僕の後ろで配偶者が「何か嬉しそう」と言う。エロが多いのは確かにあるけど、墜ちるところまで墜ちる女性の話はやはり苦手なのだ。それでも、男を社会を悪を恨むヒロインの姿に魅了されたのは間違いない。
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