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ローリング・サンダー・レヴュー マーティン・スコセッシが描くボブ・ディラン伝説のikumuraのレビュー・感想・評価

3.8
ボブディランが1970年代に行った伝説的なツアー、
ローリング・サンダー・レビューを、スコセッシがドキュメンタリー化。
Netflixで公開みたいですね。
といっても、スコセッシだから、一筋縄ではいかない。
(ちなみに、スコセッシはボブディランのバックでやってたザ・バンドのラストツアーも撮ってますね。未見ですが)

ベトナム戦争後の、アメリカ人のアイデンティティの喪失感に応えるべく、
「アメリカ人の起源」ともいえるプリマスを皮切りに、
まずは東海岸、津々浦々、小さい会場を中心に回る。
予定を決めてないから、着いた先でチラシを配って宣伝。
ものすごい大所帯で、途中で飛び入り参加したジョニ・ミッチェルなんかはそのまま帯同。
時間が足りず、あぶれたミュージシャンは文句も言わず裏方に回るなど(本当に?笑)
いろいろとカオスなツアー。

アイデンティティの探求は、ボブディランにとっても同じで、
白塗りのメイクに汗を滴らせて熱唱。
この人一体何してるんだろう、と思った次の瞬間に、
背筋に電流が走ったかと思うほどカッコいいディランが現れる。
やがて、殺人の冤罪事件で投獄されたボクサーを歌ったプロテストソング、ハリケーンを作り歌うハイライトへ。
公民権運動とともに伝説となった彼の原点回帰なのか、
しかしそれを超えた、何かに憑かれたような名曲。
(ツアーの最初でバイオリンの人が紹介された時、
あ、これ、ハリケーンの人かな、とは思った)

いま、インタビューされているボブディランもお茶目で可愛かった。
でも、質問に真面目に答えるわけじゃないし、
このドキュメンタリーを見ても、ボブディランという人が掴めたとは思えなかった。
ただ、その創造のエネルギーに痺れ、生きる力をもらうしかない。
最後の、監督が託した?メッセージと思われるものに納得。
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