しちれゆ

パヴァロッティ 太陽のテノールのしちれゆのレビュー・感想・評価

3.8
大きな体躯と力強く豊かな声、陽気でお茶目な性格、「歌を愛し、人生を愛し、パスタを愛した」パヴァロッティのドキュメンタリー。

ローマでの三大テノールの競演ではそこに指揮者も加わって大の男たちがキャッキャして心底歌うことを楽しんでいる。ダイアナ妃が来場したロンドンのチャリティコンサートでは妃におずおずとマノン・レスコーの歌を捧げ、ボノに曲を依頼するときは「神は在宅かな?」と押しかける、最高の人たらし。

34歳も年下のニコレッタとの関係が露見したときの「でも恋に落ちたんだ」という言葉も仕方ないような気がする。女性に甘やかされるのが好きでいつも女性を愛し信頼していたというのも彼女たちを庇護する力があってこそ。
パヴァロッティが病に倒れた時ニコレッタがまだ4歳の娘アリスへ「何か言葉を残して」と言うと彼は「私が何か書き残せば娘は一生それに縛られる」と聞き入れなかった。

偉大なテノールにして愛情深い父親であり、一方では舞台に対する恐怖と人生への苦悩と少しの傲慢を持ち、それでも歌で世界を照らしたパヴァロッティ。晩年自分の若き日の歌唱を聴き「私は巧いな」と言ったと言う。
しちれゆ

しちれゆ