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ミーポック・マンのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

ミーポック・マン(1995年製作の映画)
3.0
[死すら二人を分かてません] 60点

ミーポックという和え麺がとても美味しそうで、とても午後3時に観るような映画ではない。腹が減る。エリック・クーにしてみれば、移民の国であるからこそ空洞になった"文化"に食を当てはめ、シンガポールのアイデンティティを映画世界に花開かせたかったようだが、午後3時の大学生男子にとっちゃ空腹を助長する方が効果的だった。

そんな飯テロ映画の本作品だが、実際にテロ行為に及ぶのは前半だけで、後半はミーポック売りと常連客だった娼婦バニーの狂気的な恋愛に乗り換える。父親が死んだせいで、より内気になったミーポック売りが、バニーに対して窃視的な恋愛を繰り広げる前半は、まだまだ可愛いもんで、徹底的に虐げられるバニーとそれを見ることしか出来ないミーポック売りという構図から、誰にも頼れない孤独な二人の肖像を浮き彫りにする。バニーがしこたま酔っ払って車に轢かれてからは純愛ホラー映画に変わり、自宅に連れ戻って看病するミーポック売りと最早生きる気力すら失くしたバニーの"純愛"映画に変容する。元々監督はホラー映画大好きなので、原作としている小説も"恋した死体をモルグから奪ってきました"というホラー小説を恋愛風にアレンジしたものらしい。確かに前半からミーポック売りの家には死の臭いが充満していたし、バニーについてはいつ死んでもおかしくないような状態ではあったが、まさか死体と愛を育む映画になろうとは。

"日本で楽しみな食事はなんですか?"というありがちな質問に対して、目の色変えて滝のように喋った後に"ホテルの朝食ビュッフェも最高、あの温泉玉子なら3つは食える"という謎情報を付け足すエリック・クーが最高に可愛かった。
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