ブロックバスター

ミーポック・マンのブロックバスターのレビュー・感想・評価

ミーポック・マン(1995年製作の映画)
4.5
恋は多幸感も、避けようもない悲しみもつれてくる。
主人公のジョニーとバニーを見ていて、切ない気持ちになりながら、ふとそう思った。
主役のジョニーは、父の死のショックで吃音になり、朴訥とミーポック(シンガポールの郷土料理)を作る青年。

相手役のバニーは、体を売ることでしか生計を立てられない可哀想な女性。
学歴社会で競争が厳しいシンガポールで、まさしく“落第点”を付けられたような2人だ。
それを象徴するかのように、周囲は2人を値踏みし、ぞんざいに扱う。
時にお金を無心したり、時に体を搾取したり。

しかしジョニーにとって、バニーは長い片思いの相手であり、生きる意味だった。
そんなある日、交通事故に遭ったバニーをジョニーが介抱したことにより、2人は距離を縮める。
「憧れだったバニーがそばにいる!愛おしい!」という気持ちを爆発させるジョニーの姿は本当にかわいい。
バニーを守ろう。そう決意ジョニーが、金を無心しにきた迷惑客に言い返したり、ヤクザを追い払うシーンは「恋は勇気をくれるものなんだな」と、見ていてほっこりした。

しかし、2人の恋心は悲しい形で成就してしまう。
終盤はほとんどジョニーの一人芝居だが、これが本当に実物。
2人きりの世界なれた。なのにこんなに悲しくて切ないなんて…。

「愛おしいと思う強すぎた気持ちが、結果愛おしいものを壊してしまう」

今までこんなラブストーリーを見たことがなかったので、心の中に青タンができてしまったような気持ちになった。