ブロックバスター

一緒にいてのブロックバスターのレビュー・感想・評価

一緒にいて(2005年製作の映画)
4.0
「一緒にいてほしい」と、愛おしい人を思い浮かべる時、大抵の人は孤独を味わっている。
でも「一緒にいたいと思う存在」こそ、壊れそうな自分をつなぎとめる、錨(いかり)なのかもしれないと、今作を見ながら考えた。

今作は『少女時代の恋愛』を女の子同士のカップルで、
『青年時代の恋愛』を高級マンションに住む令嬢に片思いする警備員(いわゆるハゲデブ)の2人で、
そして『壮年時代の恋愛』を妻を亡くした男性と二重苦を抱えながらも前向きに生きる女性の2人で描いている。

様々な観点からストーリーが進むものの、個人的は女の子に恋する女の子に共感した。
2人が距離を縮める様子がガラケーのメールのやりとりで描かれている(テキストベースだけなのに、お互いが惹かれ合う高揚感が演出されててイイ!ガラケーも時代感があって尚良し!)
デートを重ねる中で、2人でプリクラを撮ったりお互いに化粧を施し合ったりするシーンはキュンキュンするくらい可愛い。個人的には2人がクラブで遊んだ後、街の外れの人がいないショッピングモールの階段で、2人寝転んで抱き合いながら夜空を見上げるシーンは、何というか永遠に匹敵するシーンというか一言でいえば「エモいな〜〜!」

そしてハゲデブの警備員の恋模様も切なくて胸に刺さる。
彼は人生のハズレくじを引いている虚しさを食欲で満たしているような青年。
そんな彼にとって、勤め先のマンションに住む女性を防犯カメラで追うことが唯一の生きがい。
話しかけることすらできていないが、現状の彼はそれで満足しているのだ。
届かない存在だからこそ自分の理想を重ねられるし「いや…自分なんてとても声を掛けられない」と奥手でいることで傷つくことのない安全地帯に居られる。
でもさ、片思いの相手を頭の中に呼び寄せて会話するのって脳内モノローグで虚しくて、結局人はそれ以上を求めてしまうものなんだよね。
彼も同じく一念発起して、マンションに住む令嬢にラブレターを書こうとする。
敢えてバラ柄の便せんを選ぶところが微笑ましいし、ああでもないこうでもないと書きなぐりながら「…うわーーーっ!!」って便せんをビリビリにしてしまうシーンも「中々思いを手紙で伝えようとするのは難しいよね。分かるわかる!」ってうなづいてしまう。

女の子の恋も、警備員の恋も、結局悲しい結末を迎える。でも、たとえ自分が望んでいた答えに出会えなかったとしても、誰かを恋するときめきこそ、人生に輝きを与えるのかもしれないね。