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新解釈・三國志のymdのレビュー・感想・評価

新解釈・三國志(2020年製作の映画)
1.0
福田雄一とはとことん合わないことが明確になった本作。

個人的には邦画で一番苦手なタイプのコメディ映画。
オフビートというほどテクニカルなものでもなく、クソ映画として愛でるには金がかかりすぎている。

ここにあるのはただひたすら弛緩した怠惰なギャグの繰り返しで、その生温さにひたすら辟易してしまった。

これまでの彼の作品や発言からも推察できるけど、福田雄一はたぶん、原作やモチーフに対する興味がそもそも無い人なのだろう。

今作における三国志というテーマもセットと名ばかりのキャラクターを用意しただけで、基本的にはいつも通りの薄寒いギャグの連続に興じているだけである。

肝心のギャグ要素も「ただ絵面そのままにふざけているだけ」でしかなく、ユーモラスと称するには程遠い。

たしかに豪華なキャストが奔放に遊び倒す様はその役者のファンなら楽しいかもしれないけど、それは映画としての面白さとは別のものだ。

三国志の象徴的なエピソードを適当になぞりながら進んでいくストーリーも壊滅的なうえ、演じる役者たちも演じる気などサラサラ無いようで、ただその人がコスプレして福田雄一が求めるスタイルに応えようと内輪ウケに興じる姿は面白くないという以前に哀れですらある。

そんな彼らの冗長過ぎるダラダラした演技は、ハナから取ってつけたような脚本の推進力をさらに削ぎ落としており、2時間以内とは思えない、永遠に続くのではないかと錯覚するほど苦痛の時間に付き合わされることになる。

福田雄一が三国志を映画にする、という字面の時点で“三国志らしさ”を期待する気は毛頭ないが、役者のアドリブに頼り切って物語として成立させる気のない無責任な態度にはただただムカつくばかりである。

さらに呆れるのは、時代錯誤も甚だしい露骨なルッキズム描写だ。
キャストの容姿をストレートに揶揄して笑いに変えようとするその演出はあまりにも醜い。

この手のコメディに対してそれは穿った見方だと考えることもできるかもしれないけど、コメディというのはある種最も時代性・社会批評性を有するべきジャンルだと思うし、仮にも邦画エンタメ界のトップランカーである福田雄一が時代遅れのルッキズムを笑いのネタとして消費しようとする無自覚さに慄く。

福田雄一の作風が好きな人はいつも通りのノリで楽しめるかもしれないけど。
個人的には彼の作品を観ることはもうないだろう。
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