tricken

新解釈・三國志のtrickenのレビュー・感想・評価

新解釈・三國志(2020年製作の映画)
1.5
2020年映画。

-『水曜どうでしょう』ファンにとっての大泉洋の面白さを狙っているのだろうが、彼のコメディ方面での魅力をほとんど引き出せていないし、このノリで映画2時間を楽しませようという方向性に承服できない。そもそも『勇者ヨシヒコ』もおもしろくない回の方が多いのに、無謀だった。

- 既に当時の映画評論が指摘しているが、貂蝉(演:渡辺直美)に呂布(演:城田優)の容貌を「中途半端な外人顔」と形容させ、「エスパニョール」と続けさせる演出の古臭さ・時代遅れ感・醜悪さは酸鼻を極める。監督を持ち上げる小規模の飲み会から一切外に出さないでほしい。貂蝉最期の時に一瞬だけ出てくる広瀬すずのほぼカメオ的とも言える使い方さえつまらなかった。

- 小喬(演:山本美月)に対して周瑜(演:賀来賢人)が一人芝居をするシーンの内容面での気持ち悪さが凄まじい。

- もはやいちいち指摘する意義も感じないが、日式のリーチ麻雀どころか中国の本土の麻雀もその歴史は清朝以降であり、後漢末期にあるわけがない。ギャグが寒い上に差別的だから、元から力を入れる気もないだろうこんな些細なことさえ看過できなくなる。

- 大泉洋・小栗旬・佐藤二朗などの役者が、コメディとシリアスの両方を高い水準で達成したドラマ『鎌倉殿の13人』(2022年)が世に出た今となっては、この映画のコンセプトは完全に時代遅れの腐敗済の作品になったと言ってよいのではないか。

- 冒頭の呂布 vs 関羽・張飛の殺陣、中盤の趙雲の殺陣が案外悪くなかった。また作中終盤の泥酔劉備の演説は、『蒼天航路』における劉備玄徳のような趣があり、悪くない。出ている俳優たちは、監督の方針に沿った範囲で努力をしている。コメディどころの演出について数少ない褒めどころでは、許褚(演:一ノ瀬ワタル)の腹踊りは、許褚によくあてがわれる肥満ではなく、キックボクサーの体格を活かした筋肉で行われており、単なる下品とも言い難い味を出している。

- 黄月英の孔明サポート説を拡大解釈して、出す献策ごと諸葛亮を導く女性として出したのは、日本の(ゲーム以外での)三国志ものとしてはそこそこ特徴的だったかもしれない。ただし既に上記に挙げた数え切れない瑕疵がある状況では、それだけで作品の評価を覆すことはできない。

▼文脈情報
2023年01月鑑賞(Amazon Prime Video)
tricken

tricken