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血筋のeulogist2001のレビュー・感想・評価

血筋(2019年製作の映画)
3.8
民族や国家などをさておいても面白い。タイトルは「血筋」だが、(日本人的には血のつながり)のほうがしっくりとくる。

まだ二十歳の監督は中国の朝鮮族として生まれたが、両親が4歳の時に離婚して、母親と一緒に日本に来た。母はその後、日本人と再婚した。

そして日本の大学4年となった彼が産みの父親を探しにいくドキュメンタリー。祖父母や叔父や従兄弟も出てくる。

ひとの考え方が時代や国家の状況や学歴などにも大きく影響を受けるのは本作でも現れている。血筋よりもむしろ「環境」ではないかと強く感じる。

息子のカメラから感じる冷静な目線や感情とそれと対峙する父親の性格やものの見方は明らかに異なる。とはいえ18年ぶりに出会い、対話する中で「なにか」がそこに生じる。

それは親子関係ともいえず、血筋という一見確固とした関係の中で、実はなんの意味もない関係の中で、「親と子」を前提とした「なにか」を構築する過程を見たように思う。

その点が圧倒的にドキュメンタリーであり、映画らしさを感じる。

ひととひととの関係性は事件である事を体験する作品。そこに特定の制限がある事は構築に緊張感をもたらす。そしてそんな作品を観ることは自分自身のシステムとの相似や位相を見極めることにもなった。
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