es星は気に入った度合い

見えない太陽のes星は気に入った度合いのレビュー・感想・評価

見えない太陽(2019年製作の映画)
3.8
移民政策、政教分離(ライシテ)、経済不振、テロ対策法…フランスの抱える複雑に絡み合った問題を考えながら見ると、あまりに絶望的で頭が痛くなる。

日本でも2014年頃にISに志願しようとした青年がトルコで拘束され送還された(2019年に関係者と共に書類送検)。ISに限らず、無宗教で平和ボケした人間が勧誘によってイスラム過激派に志願するという話は他人事ではない。

ただ、フランスにおいてはもう少し根深い事情がある。
ISに参加した欧州人の中で最も割合が多いのはフランス人。理由は政教分離、移民政策、経済不振の三つにある。
フランスは2005年から移民政策を積極的に進めてきた結果イスラム教徒の割合が増えた。そもそもフランスは政教分離の国。しかも公共の場からの宗教色を一掃させようとする非宗教性の概念(ライシテ)を持つ。
アメリカの同時多発テロ以降イスラム教徒に対する恐怖が芽生えた事に加えて、移民の受け入れ、また欧州の経済不況の波により彼らに対する差別意識が強まり、差別を受けたフランスのイスラム教徒達は過激派の思想へ近付いていく(過激派イスラムでは、他宗教の信者、無神論者、無宗教者は人に非ずという考え)。
更に厄介なのは今作に登場する青年のようにイスラム教徒に入信する若者達。ライシテの概念により宗教を持たない人々が多いからこそ、不況により希望が見出せなくなった時に縋る対象がネットで情報を得たイスラム過激派の思想となってしまう悪循環。

ただこの映画、もっと面倒臭くややこしい所にまで突っ込んでいる。
2017年に可決された新テロ対策法案。当局がテロの脅威が迫っていると判断した際には、令状なしの家宅捜索、テロを黙認しているとされる礼拝所の閉鎖、即時身元確認の実施などが許されるというもの。
作中で示唆されるのは、国内で起きたテロがこの思想弾圧を合法化できる法案を通す為の自作自演だった可能性。

フランスが抱える闇を余す事なく描いた良くできた作品だと思う。