松井の天井直撃ホームラン

静かな雨の松井の天井直撃ホームランのネタバレレビュー・内容・結末

静かな雨(2020年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

☆☆☆★★★

『50回目のファースト・キス』&『博士の愛した数式』

原作読了済み。簡単に。

原作は100頁強と短編に近い作品で。しかもエモーショナルな場面がまるでなく、僅かに事故に遭う場面ぐらい。それだけに、「これは映画には向いていないのでは…」と思っていた。

短い内容だけに。映画化にあたって、(何で仲野に改名したのかなあ?)太賀の勤め先の様子を入れ。でんでん演じる教授の父親に纏わる《記憶》の話を追加していた。
原作だと、こよみが語る《リスボン》の話による《記憶》に関する話だけだったので。この2つの話と。2人の同居生活が始まり。毎朝繰り返される挨拶によって。より《記憶》に対する意識付けを観客側にもたらす。
また映画で、こよみが事故から目覚めるまでの期間は2週間だったが。原作だと4ヶ月かかり。目覚めた時には、初春から初夏へと季節は以降していた。
もう1つ、原作との大きな違いとして。こよみの過去の彼氏の存在。更には、飲めない酒を飲む村上淳の話等を入れていた。

映画は全体的に暗い場面がやや多く。この監督らしい光の描写は、今ひとつと言ったところではあるのですが。何よりも対象となる2人を中心として捉える、画面の静謐さであったり。余白を活かした台詞の間であったり。
それらの1つ1つの場面に被さっていて、2人を静かに見守っているかな様に、リリカルに奏でられるピアノの旋律が、胸の奥に静かに染み渡って来る思いでした。
こうなると、中川監督の次回作にも大いに期待をしてしまいます。

ところで、これも原作にはなかったと思う人物で河瀬直美が登場。観ていて(お母さん役?)嫌〜な人物を、まるで【素】の様に演じていた。
案外とこの先に需要があるんじゃないの?監督した作品なんかを観ても、根っからの嫌味な人の様に思えるし(u_u)

ラストはもう1つと言ったところ。
ここはやはり、原作にあった〝行さんはブロッコリーが嫌い〟を太賀自身で剥がす場面が欲しかったかなあ〜(´-`)

ちなみに、原作には記憶が直ぐになくなってしまう人の小説の話があった筈で。原作自体が『50回目の…』と、『博士の…』にインスパイアされて書かれたモノなのではないか?…と思ってはいるのですが果たして。

2020年2月10日 シネマート新宿/スクリーン1