オトマイム

さすらいのオトマイムのレビュー・感想・評価

さすらい(1975年製作の映画)
4.5
これぞ欧州のロードムービー。多くを語らず余白を持たせることで生まれるゆるりとした世界に心を委ねる心地よさ。生まれ変わったら根無し草のように旅をし続ける時期が何年かあってもいい、そんなふうに思う。

当然のことながら同じロードムービーでも、舞台が欧州とアメリカとで全く質感が違う。アメリカのそれは視界を遮るものが何もない。開放的すぎて空虚さや絶望感みたいなものさえ感じてしまう。それが魅力。一方ドイツの田舎道をひたすら車で移動する本作は、線路があり電車が通り時には街が現れ人々の生活がある。作品に湿度がある。

言葉や説明は少なくとも美しい画がたくさんあってそれだけで胸を打たれる。例えば川に架かる橋で遊ぶ子供たち。例えば鬱蒼と繁る暗い森で光る金髪。

全編に流れる監督の映画愛が心に響く。深い余韻が残る傑作。

ロードムービー第3作