矢吹

さすらいの矢吹のレビュー・感想・評価

さすらい(1975年製作の映画)
4.5
たまたま出会った2人の男が西ドイツの故郷や映画館を巡り、一つの車、それぞれのペースで、過去と現在を往復して、目的地へ向かう。
お互いの生き方、考え方が少しずつ見えてくる身の上話や仕事の話やその他をゆるく軽くあーだこーだいいながら、また色々な人に出会いながら。
道程、ドイツ映画の巨匠へのオマージュや映画館の死、印刷術とフィルムなど、ノスタルジックなアイテムもたくさん散りばめながら、進んでるようで、進んでる。追い越されているようで、追い越されていない。
過去の積み重ねが今の自分。
そんな、みんな平等なおんなじ時間を切り取る。

モノクロ、ビスタサイズ、ステキ音楽。
かつてあった映画という形への語り。
オープニングからして、最高な、
たまにある、見終わってすぐにソフトを買っちゃうやつ。
そして、めちゃくちゃ好きだがまあ長い。
この作品を一瞬にしてか、もしくは永遠にしてしまって、脳味噌に詰めておきたいです。
とてもタイプなやつだった。
できることなら他2つも一緒にね。
だいぶ前に見たからあんま覚えてないし。

撮影場所だけが事前に決めてあり、撮影クルーで実際に旅をしながら、そもそもの脚本はなしで、撮影前日と当日に書き足しながら撮ったというザリアルガチガチロードムービー。
んでヴェンダースさんロードムービー三部作のラスト。
風景の素晴らしさはもちろんのこと、
運転しながらかける音楽もスローなブギだったり、ロックだったり、めちゃくちゃカッケェ。
しかも撮影監督が、ダウンバイローの人らしいと。ロビーミューラーさん。さすらい3作から、その他ヴェンダース作品から、調べたらミステリートレインとかダンサーインザダークとかその他もろもろもろもろもやってるわ。これはもうそういうことですよ。

そして1番伝えたいことは、
リュディガーさんがイカしすぎてるってこと。

無声映画なんて見たくないだろって大人の予想に反して、原始スクリーン体験に歓喜する子供達の姿が、とても綺麗でインパクトが強かったな。

最後には裏切られたが、晴れて自由のチャンピオンだ。
おれも努力するよ。
だから、ノートと空っぽのカバンとサングラスを交換してくれや。
矢吹

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