mimitakoyaki

王の願い ハングルの始まりのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

3.8
韓国語に興味あってちょっとかじってるわたしには、このハングル誕生にまつわる話はかなり興味深く面白かったです。

朝鮮では、朝鮮語を話していても表記は漢字しかなく、文字数の多さや朝鮮語を発音通りに表記しきれないという難点があり、高級官僚や貴族の間でしか使われていなかったのを、15世紀に世宗大王が広く国民が使えるシンプルな文字を作ろうと、その当時地位が低かった僧侶とともに朝鮮語の発音などを研究し、ハングルを開発した事を描いた物語です。

わたしも独自で韓国語を勉強してる(ハングル講座を聞くとかその程度)のですが、日本語と韓国語の言語距離がかなり近い事もありますが、ハングルは子音がすごく少なく、あとは母音と組み合わせるだけなので、ほんとにすぐに読めるようになって驚いたものです。
このシンプルな構造自体も、サンスクリット語やチベット語を参考に、相当考え抜かれてめちゃくちゃ合理的に作られてるのが、この作品を通してよく分かりました。

しかも、ハングルの文字の形は、舌や口、喉といった発音器官の形から成り立ってるというのも、ほんとに面白い!
世宗大王が、多くの民が文字を習得する事で、学び知識を広げ、それが国力にもなるということで、身分が低い人にも簡単に覚えられる文字を追求したというのも素晴らしいと思いました。

どこまでが実際の話かはわかりませんが、王様は、儒教を重んじる臣下達が敵視する身分の低い僧侶を王宮に呼び、新しい文字作りを一緒にするだなんて、臣下達はこぞって猛反対したのですが、そこを押し切り、僧侶達を信頼しながら信念を貫くところや、ただ命令して開発させるのではなく、自分も研究し僧侶らと一緒に苦労したところもすごいです。
ほんとに学問や知性を重んじる知的な王様だったのだと思います。

ハングル開発の中心を担ったシンミ和尚も、相手が王様でも遜ることなく、正しいと思うことを恐れずに言う率直さがかっこいいし、演じたパクヘイルもとてもサマになってました。
その弟子のお坊さんには「愛の不時着」や「ラケット少年団」「ムーブ トゥ ヘブン」のタンジュンサンが演じていて、ほんとにほっこりと可愛らしかったです。
それにサンスクリット語のお経をまるで歌のように唱えててすごく上手で驚きました。

ソンガンホは庶民のオッサン役が板についてますが、今回は王様役で、やっぱり何でもモノにしてさすがです。
ソンガンホとパクヘイルの共演は「殺人の追憶」「グエムル」に続いて3作目なのかな。

世子にキムジュナン、官僚には「ヴィンツェンツォ」のチェドンムン、「シグナル」のチョンへギュンなど知った顔もチラホラいました。

文字を特権階級だけのものにしておく事は、つまり知識を権力が独占する事だと作品の中で言及されていましたが、これは、日本が植民地支配してた時代に、朝鮮人から朝鮮語を取り上げて日本語を押し付ける同化政策を通してアイデンティティまで奪おうとしたことに抵抗し、朝鮮語の辞書を作る事で朝鮮語を守ろうとした人たちを描いた「マルモイ」とも通じるものがあり、あらためて言葉や文字の持つ力について考えさせられました。

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