評価が「すごい泣けた」「作り話っぽい」と両極端だったので見るのを悩んでいた『糸』を遅ればせながらの鑑賞。
いわゆる「名曲からインスパイアされた」という映画の中では、かなり良かった方だと思う。『雪の華』✖️。『小さな恋のうた』△。『糸』まあ◯。
幼なじみの男女が、何度も人生を交差させながらついに結ばれる、という点では、同じ成田凌主演の『弥生、三月』とも重なる。3.11など「平成」を語る際になくてはならないキーワードを盛り込んでいるのもいっしょ。
ただ『弥生、三月』の方はどろどろでも繰り返す2人の交差した人生に具体的な出来事があったけれども、『糸』では中学生の頃のエピソード以降、結婚式で一瞬出会うだけで、またさらに時が経つ。それだけの繋がりで20年近くもの時を経ていきなり抱き合うラストって、考えてみれば、かなりリアリティはない。
それだけの想いを秘めていたのなら、おそらく誰を不幸にしても、あの結婚式で出会った時に恋に落ちるはず。
少なくとも、新婦の友人として式に招かれているのだし、新郎は親友なのだから連絡先は簡単にわかるはず。
そうでなくても、結婚式って携帯で写真撮って「送るからメアド教えて」って余計な恋も簡単に花が咲く場所なのに、何も聞かないでまた10年連絡も取らないとか、あり得る? 普通の友達レベルでも聞くし。
だいたい、こんなに共演シーンの少ない恋愛映画って、見たことない(^^)。
またDV、余命もの、シンガポールとか、ちょっと話を詰め込み過ぎ、っていう件。確かにひとつでも映画が作れる話題が「全部のせ」って感じではあるけど、私は我が人生を振り返って重なるところもあり、なかなか良かったと思う。
中学生の頃好きだった女の子と大学生の頃に再び巡り合って付き合ってたし、愛する人が癌になって「死なないでくれ!」って思いながら子供の世話をしたり、山田孝之の『ステップ』みたいな生活もしてた。だから、いろいろ落ち着いた頃に「平凡が一番いい」と思ったし、長く生きてればいろいろあるもんだ。
そういういろんな人生の「いいとこ取り」ではなくて「大変なとこ取り」のストーリーは、誰でもどこかに自分の人生を重ねられるのかも。
ただ、ラストまでの流れがしつこい。私は倍賞美津子が余計なこと言わないで、こども食堂の外で追いかけて行ってストレートに再会させてあげたかった。
おそらくラストシーンを平成最後の日にして、あの花火をバックにってあざと過ぎることを考えたからなんだろうけど、あれはやり過ぎ&だらだらし過ぎ。だいたい平成から令和になろうとしている日に、相手のLINEも知らずに人混みの中で探し歩くとか、ないでしょ。
でも劇中、いいところでかかる名曲「糸」にはグッときたし、突っ込みどころは多かったけど、総論で感動しちゃった感もあるから、結構無茶な脚本を瀬々さんが上手くまとめた感じ?
エンドロール、菅田将暉の「糸」、よかったな〜。