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糸の821のレビュー・感想・評価

(2020年製作の映画)
3.0
世間が『鬼滅の刃』劇場公開初日に湧く昨日、私はひっそりと本作を観てきました。
結論から言うと、役者陣の演技は光る一方で、ストーリーと演出(特に音楽)がイマイチだな〜と思ってしまう作品でした。中盤からは入り込めなすぎて、対岸から観ているような気分になってしまいました。

まずは良かった側面の役者陣の演技から。
とにかく小松菜奈の演技が素晴らしかったです。子役の演技を経て登場した瞬間、それまで葵を演じていた子役と纏う雰囲気がやしぐさ、喋り方が全く同じで鳥肌が立ちました。本作全然泣けなかったんですけど、小松菜奈がカツ丼食べるシーンだけは泣きました。心揺さぶられました。それなのに監督、なんであのタイミングでシーン切り替えるの…。切るの早すぎ…。もっと見ていたかったです。
榮倉奈々も良かったです。なんかもう別の映画の主演ですか?ってくらいの存在感だったし、エピソードに厚みを感じました。
あと、主演の菅田将暉含め、皆さんの涙の流し方がとても綺麗でした。泣くシーンが多かったので印象に残ってます。(ちょっと綺麗すぎる、とも思ってしまったけど)

役者陣のお芝居は良かった反面、ストーリーについてはエピソード盛り込みすぎ感がありました。いいのか悪いのか、めっちゃサクサク進みますよね。平成の印象的な出来事も、とりあえず取り込んでみたかっただけって感じがして、うまく活かせてないような気がしました。成田凌と二階堂ふみの、震災関連のエピソードとかね。

あと、個人的に一番ハマらなかったのはサントラ(中島みゆきの曲じゃなく、BGM)の使い方です。なんかもう、大変ダサくて…。作品全体で統一感も無ければ情緒もないし、とにかく安っぽい感じがしました。音楽の使い方が大変優れていた『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』見た後なので余計に。シンガポール編になったら急にEDMっぽい音楽かかり出して、それまでの空気感が崩れてそこから決定的に作品から心が離れてしまいました。終盤で流れた「チャラリ〜ン」的な流れ星みたいな音楽なに…。

それとよくよく考えたら、葵と漣の子供時代のエピソードも好きじゃなかったな。超個人の主観なのですが、絆創膏を渡す、漣のためにお弁当を作ってくる、あたりに中学生の女の子に母性をもとめているような演出を感じて悪寒がしました。平成13年のエピソードだから、って自分に言い聞かせてました。

その他雑多な気づきですが…。
本作では色々とオマージュと言うか、インスパイアされてるな〜って作品がとても分かりやすかったです。
全体的に、特にこども食堂のあたりは『幸福の黄色いハンカチ』を彷彿させました。バンも黄色いだったし。葵と漣の逃避行は『秒速5センチメートル』、葵がシンガポールへ渡航する一連のシーンは完全に『クレイジー・リッチ!』でした。ラストはなんとなく『ララランド』ポスターが頭をよぎりました。あと、カツ丼のシーンは千と千尋のおにぎりでした。

それと関係ないんですが、シンガポール大好きなので、ホテルジェンとかシャングリラが出てきて大層テンションが上がりました。
それにしてもマリーナベイサンズ見ると、見かけは子供頭脳は大人の某名探偵と京極さんが脳裏をよぎるようになっちゃったんですけど、この呪い早く解けませんかね。
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