鷲尾翼

音楽の鷲尾翼のレビュー・感想・評価

音楽(2019年製作の映画)
4.0
【まとめシネマ】#647

【まとめ】
* シュールな面白さと確かな説得力
* 後半のライブシーンのオルタナティブ
* 誰もが感じた素朴な音楽の力

本作は、岩井澤健治が監督、脚本、絵コンテなど作品の全てを担当し、4万枚を超える膨大な作画、制作に7年以上の期間を費やしたアニメ映画。

本作は、シュールな面白さで構成されている。

作風はスケッチブックに色鉛筆で描いた落書きのようなゆるさがあり、声優陣に、元 ゆらゆら帝国の坂本慎太郎、俳優の前野朋哉、芹沢興人、竹中直人などジャンル問わずの個性的。シュールなコントを見ているようなセリフの独特の間や雰囲気が、見れば見るほど癖になる。

また、本作が提唱している「音楽の力」には誰もが納得してしまうような説得力がある。ギターとベースの違いも分からず、チューニングもせず、何となく鳴らした「あの音」が、何かスゲェ。

後半の野外ライブシーンは、オルタナティブな魅力が詰まっている。

制作秘話として、実際にステージを設営して、ミュージシャンや観客を動員したライブを撮影している。しっかり軸となるベースとドラムに、リコーダー、ギターなど形に捉われない音楽が次々と加わる。

「オルタナティブ」という音楽ジャンルは、説明が難しい。だが、このライブシーンの音楽は、オルタナロックの旨味が詰まった最高の音楽だ。

本作は、誰もが感じたことがある素朴だが忘れられない音楽の力、淡い青春の日々をシュールに描いた作品。そして、岡村靖幸が秘密の役で出演している。このサプライズが、最高。
鷲尾翼

鷲尾翼