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いつのまにか、ここにいる Documentary of 乃木坂46のBGのレビュー・感想・評価

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決心のきっかけは理屈ではなくて
いつだってこの胸の衝動から始まる

乃木坂も悪くないかも知れない。私がそう思ったのは、2017年11月8日の東京ドームにおけるWアンコールの動画を観た時だ。乃木オタには説明不要かと思うが、伊藤万理華と中元日芽香が卒業となる例の名曲「きっかけ」である。

本作は、その1年後となる2018年夏頃からの約1年間を追ったドキュメンタリー映画だ。昨年12月をもってグループを卒業した西野七瀬を中心に、現エースの齋藤飛鳥、3期生の次世代エース格である与田祐希らの等身大の姿を映し出して行く。

本作を一言で表すならば、"ボクが好きになった乃木坂ちゃん観察日記"である。時折画面中央に入る監督のモノローグ的な説明に象徴されるように映像で語るんでもなし、時折流れる仰々しい劇伴にはウンザリするし、散文的な章立てからスペシャルな何かを抽出する訳でもない。
正直、ドキュメンタリーとしてはクソレベルだと思う訳だが、それでもオッサン乃木オタである俺は泣きまくりなのでしたとさ。
それは、最もキラキラしている「今」を切り取っているからに他ならない。そして、それを乃木坂を知らない人が知る「きっかけ」になれば良いという作品であり、まあプロモーションなのである。そのくせ内容は主観的なファンムービーとなっており、誰に向けた作品なのよ?言葉は悪いけど、まあその程度の志の商品と思ってしまったのだけれど。


サヨナラは通過点、これからだって何度もある
後ろ手でピースしながら、歩き出せるだろう
君らしく…

でまあ、卒業をテーマとしているのだが、その前提となるグループであることの掘り下げが圧倒的に足りない。

"乃木坂46"というグループとは何か。
ここからは本作とほとんど関係ないのだが、つまり「私」の "ボクが好きになった乃木坂ちゃん観察日記"となる訳だが、 誤解を恐れずに言えば、乃木坂46の魅力は気持ち悪いほどの仲の良さである。例えるならば、彼女達は修道女だ。グループ愛という信仰に取り付かれ、ある種の盲目的なトランス状態にあると言える。作中、その一端は垣間見えるものの、もう一歩踏み込む勇気があれば面白かったのになあと、残念至極であるのだ。

その絶対的な帰属意識を持つ集合体の中で、不合理な抑制を受け、軍隊さながらにその命(若さ)が燃え尽きるまで、組織のために戦い続けるのである。彼女達は口々にこう言う。「乃木坂が好き」「乃木坂は素晴らしい」「生まれ変わっても乃木坂になりたい」と。もはや、怖い。だって、乃木坂とは彼女達本人のはずなのに。"乃木坂46"とは一体なんなんだろうか。

作中で、鋭い感性を持つ3期生・大園桃子の言葉が強烈なインパクトを放つ。本作中、最も衝撃的かつ象徴的な名シーンである。それは、レコード大賞を受賞し、アイドル界のみならず、曲がりなりにも世間一般に評価されたその瞬間に。坂道を登りきった刹那に。
「私、思っちゃいました。乃木坂も悪くないかも知れないって…。」
"悪くない"ですよ?素直に喜ぶ訳でもなく、どこか居心地が悪そうに、自分の想いに戸惑うかのように。そして桃子を包み込むように抱きしめる飛鳥。新たな信者の誕生です。どこかアイドルになりきれず、一般人の感覚が残り続けていた大園桃子が目覚めた兆しと言っていいのではないだろうか。さあ、讃えましょう。生まれたての子羊に祝福を!

なんと、イカれているんだろう。そして、何と危うげで、何と美しいことか。清楚と言われる乃木坂の妖美の本質はここにある。可愛い女の子達の、この"気持ち悪さと危うさ"に堪らなく心惹かれてしまうのだ。

本文冒頭のライブ映像において、特別に好きなシーンがある。アンコールを終えて退場となる場面、卒業する二人だけが花道を歩き出す。それを見送るメンバー達。その一瞬後、直ぐに後を追い掛け、追い付いていく。それはまるで、残された自分達も、いずれは卒業する存在であり、この輝かしい舞台を去る日が訪れるのだから、この別離は今だけのものなんだよ、と。それは、あたかも殉教者を見送る狂信的な迷い子のように。死後の世界ではまた一緒にアイドルしようねと。…マジでコワイッ!そして、何と甘美な姿だろうか。
そして、我が身を振り返れば、俺も充分に"気持ち悪い"乃木坂信者なんじゃねーかよってね。いつのまにか、ここにいた。実に、考え深い。

そして、そんな別れがまた1つ。長らくグループを支えて来たキャプテンである桜井玲香さん、本当にお疲れさまでした。これからのご活躍を祈っております!


君と離れるのは悲しいけど、大事な別れだ
もっともっと広い世界、知らなきゃいけない
いつかいつか、きっときっと
違う道を選んだ意味
輝く未来のためと互いにわかるだろう



乃木オタが観た細かすぎる見所
・握手会で端まで手を振ってくれる西野
・宙を舞う白石の顔面を覆う布
・美しくこぼれ落ちる与田の涙、涙、涙
・飛鳥が生田の振り入れを気遣うとこ
・ナナミサン…
・生田の真夏に対する「ほんと止めて欲しい」
・前髪のある桜井キャプテン
・西野コメント中の松村の優しい微笑み
・適当な相づちを打つ、いつもの高山
・みなみちゃんは体育座りできて偉いねえ
・じゃんけんに負けて全力で悔しがる優里
・年越しジャンプが低過ぎるかりん
・生駒ちゃん登場にビックリする純奈
・大園のコメント全般
・同期を跳び跳ねて迎える早川
・Seishiro先生の溢れる乃木坂愛
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