somaddesign

いつのまにか、ここにいる Documentary of 乃木坂46のsomaddesignのレビュー・感想・評価

5.0
作り手の意図と無関係に、自分勝手にホラーとして楽しんだ。
「あなたが長く深淵を覗いていると、深淵もまたあなたを覗き込む」的な。

:::::::::::

人気アイドルグループ「乃木坂46」のドキュメンタリー映画第2弾。前作から4年ぶりとなる今作では、初のシングルミリオンセールスや日本レコード大賞受賞を果たした2017年、史上初の明治神宮球場&秩父宮ラグビー場での2会場同時ライブ開催やレコ大2連覇を成し遂げた18年、そしてエースであり絶大な人気を誇ったメンバーの西野七瀬が卒業し、新たな時代を迎えた19年と、近年のグループの歩みをメンバーたちの証言でつむぎ、少女たちが抱える心の葛藤や成長を、これまでにないほどの親密な距離感で描き出していく。

:::::::::::

だいたい年1本ペースで劇場公開されるAKBグループのドキュメンタリー。大して興味も情熱もないのに毎度見に行ってしまう。スクリーンを通じて初めて見る女の子が、アイドル活動の中で苦悩したり、夢と現実の狭間でもがく姿を見せるドキュメンタリーなんだろうけど、何分こちとら初対面なので感情移入もないし、感動も落涙もない。俺は自分と1ミリも関係のない、閉じた輪の世界を、神様気分で俯瞰して楽しんでるのかも。我ながら性格の悪い楽しみ方だと思う。


アイドルにハマったことがない自分が、唯一わかるアイドルグループ。バナナマンの公式妹分な関係性もステキ!

とても不思議なバランスで撮られたドキュメンタリーだと思った。
のっけから監督の戸惑いダイアローグで幕開けて、見てる方も戸惑う。乃木坂のドキュメントでありながら、終始監督の目線を感じることで、監督自身の変化のドキュメントにもなっちゃった。

監督自身が長期間彼女たちに密着してるせいか、完全に当事者になっちゃってる。画面にこそ映らないものの、乃木坂メンバーの目線で出来事を眺めて動揺してくような作り。女性アイドルグループのドキュメントが監督自身の自分語りで始まるのも、俯瞰するとなかなかなホラー。随所にメンバー化したオジサン(監督)のポエムが織り込まれるのが味わい深い。スカートの裾からスネ毛が見えてる感じ。

思い入れが強すぎるのか、大量に撮りためた素材を収まりよくまとめることは諦めて、章立てに分けて恣意的にとりとめなく放り込んでる印象。乃木坂ファンならスナップショットみたいで、飾り気のない普段の様子が楽しめそう。(穿った見方をするならば、運営公認でカメコを密着させてる狂気の目線でも楽しめる)

岩下力監督はKIRINの「のどごし夢のドリーム」CMシリーズ(ジャッキー・チェンとカンフー映画、プロレスラーになる等夢を叶えるアレ)で知られる気鋭の映像作家。
被写体と距離を置いて俯瞰するより、監督もろとも対象にのめり込んでドラマツルギーを生み出すのが作風なのかも。

章立てしてる割に時系列がバラバラでタランティーノ風味だったり、監督の没入の度が過ぎてメンバーが若干引いてみえる瞬間があったり。メンバーの光と闇を覗いてるつもりで、作り手の闇が見えてくる。そう思って見てると、タイトルの「いつのまにか、ここにいる」ってすごくホラーなニュアンスにも受け取れて楽しかった。

72本目
somaddesign

somaddesign