社会のダストダス

スターフィッシュの社会のダストダスのレビュー・感想・評価

スターフィッシュ(2018年製作の映画)
4.2
こういう美女が何かに覚醒して、意味不明な存在になる映画大好きです。『テルマ』とか『ブルー・マインド』みたいのを想像していたけど、変な怪物が出てきたりと思っていたよりもSFな世界観。何がどうしてこうなって、なぜあのような結末を迎えるのか全然分からない。主に北欧系のホラーによく見られる、メタファーを散りばめ、言葉で説明せず、最後に感じろ!という静かな圧がある作品。

親友を亡くし大きな喪失感を抱えたオーブリー(ヴァージニア・ガードナー)。悲しみに耐えられず親友の家に忍び込むが、よく朝目覚めると街は深い雪に覆われ人の姿が忽然と消えていた。謎の怪物がうろついており、親友の残したメッセージを手掛かりに世界を救うミックステープを集めることになる。なぜそうなった、途中寝てしまったかと思った。

主演のヴァージニア・ガードナーさん、どっかで観たことあるような無いような…と思ってFilmarksのキャスト欄から飛んでみるとなるほど、Netflixのエル・ファニング主演『最高に素晴らしいこと』に出演していたようだ。でも、私のセンサーはエルたんしか捉えていなかったので、あまり印象に残っていなくても無理もないだろう、しかしながらかなりの美人。

そんな美女が亡き親友の家でリクガメとクラゲの世話をしている画だけでも、私的には90分くらい余裕で観ていられるものであるが、本作は静かな映画でありながらトンデモ展開。突然ポストアポカリプスものになり、シンビオートが寄生した第9地区のエイリアンみたいな怪物が何故かうろついている。そんな世界をオオカミの被り物をした美女が歩き回る、どういう感情で観ればいいのだ。

オーブリーが目覚めた世界が現実なのか夢なのか最後までよく分からなかったけど、つまり親友の死=彼女の世界の終わりという事を意味しているはず。世界を救うミックステープを探すこととは、オーブリーの過去の過ちや後悔と内省していくことと考えるのがしっくりくる、怪物が現わすのは過去に関わった人たちか。突然アニメーションになった理由はよく分からない、一番は予算の関係だろうか、いやむしろ一番金が掛かってそうな気もするし意図が謎だ。

最初に“実話に基づく”と出てくるが、監督自身の経験がストーリーに当てはめられているようで、クレジットなどで確認できる限り亡き友人に捧げられたものらしい。ホラーっぽい演出ではあるけど、込められてそうなメッセージやテーマは去年観た邦画の『ムーンライト・シャドウ』にも近い気がした。フィルマではそんなにスコア高くないけど、私はかなり気に入っているので、これらが単純に自分の好みのテイストの作品なのだと思う。

監督が亡き友人に捧げた映画…と言いつつ、おそらくは作中のオーブリーのように自分の気持ちの整理をつけるために作った自己セラピー作品。Forgive(許す)とForget(忘れる)のテーマを二つだけ設定して、余白は観た人の解釈で埋めていくクロスワードパズルみたいな作品。かなりヘンテコな映画だと思うけど好き。