紅蓮亭血飛沫

ロード・オブ・モンスターズの紅蓮亭血飛沫のレビュー・感想・評価

2.3
ハリウッドゴジラ最新作に便乗した安心と信頼のアサイラム映画である本作。
ゴジラへのパク…リスペクト作品なのか、意外にも映画としての出来はそこまで悪くなかったです。
アサイラムの映画の中では。

出現する怪獣のデザイン・造形や、古代から蘇った怪獣という事もありマグマをエネルギーにしている設定等、素材は光るものが目立っています。
ドラマ面は相も変わらずのアサイラム会話術・尺伸ばしを貫いており、特に意味のない会話や専門用語を多用する事で会話を繋げていきますが、本作はアサイラム映画の中でも特に露骨、隠し切れていないと言っていいぐらい長ったらしく感じます。
登場人物達の必死な行動等は嫌いではありませんが、兎にも角にも彼らに焦点が当たってばかりなのでストレスを覚えます。
というのも、本作は“怪獣映画”だから、というのがその大きな要因でしょうか。
怪獣映画なわけですから、人間によるあれこれでなく怪獣をもっと見たいのです。
ゴジラやガメラ、ラドン、モスラといった日本の有名怪獣映画でも勿論人間にフォーカスを当ててドラマを彩っていきますが、そこにはしっかりと人間の行動・割いた尺以上に主役である“怪獣”が魅力的に、絶大なインパクトを放ってくれるシーンがたくさん存在します。
そのため、結果的に人間達によるドラマと怪獣の存在感が相殺して絶妙なバランスを、もしくは人間以上に怪獣を取り上げてくれた事により、怪獣映画を鑑賞する上での視聴者の需要に応えているわけです。

それが出来ていないのが、本作の欠点と言えます。
アサイラムだからというのもありますが、怪獣の造形・設定はいい味を出している一方、ろくに画面に映らないのです。
怪獣映画を見ているのに怪獣がろくに出てこない、これはいただけない。
主人公達の船が偶然にも怪獣の背中付近に乗っかってしまった際、そこから何とかして脱出しようとする過程を怪獣の背中を画として使わず、キャスト達の顔を画面いっぱいにズームアップし、その場の状況をキャストの表情と台詞だけで全部描写しているんです。
これがもうほぼ全編に至って一貫しています。
そこはちゃんと画面に出してよ、という過程も全部俳優による表情と台詞で表現しているため、じれったい上にもどかしい。

つまるところ、怪獣を題材にしているのに怪獣を映さずに俳優陣が画面いっぱいに鬼気迫っている表情と台詞を言わせ、その場の展開がどうなっているか、事態がどの方向に転んだかどうかを全部口頭で述べさせている。
アサイラムらしいと言えばそれまでですが、何度も言うように怪獣の造形・設定が光る作品なだけにろくに怪獣が映らず、俳優によるその場の解説台詞に頼りっきりのお茶を濁すスタイルは楽しもうにも楽しめません。
最終的な怪獣同士の決戦も案の定あっさり終わってしまいましたし、あれで終わり!?という肩透かしっぷりもアサイラムらしいですね(だってアサイラムですもん)。

総括として、怪獣映画であるが故のデザイン・設定の元で織り成されるストーリー構成自体は悪くない出来映えだったと思います。
お得意の尺伸ばし会話術は健在でテンポは少々悪かったように感じましたが、あれやこれやと登場人物達が自分が何をすべきかの役割を認識した上で行動してくれるバランスは好印象でしたね。
ですがやはり、先程も述べたように怪獣映画であるのに登場人物以上に怪獣が目立ってない、出てこないのは残念。
折角いい素材を活用しているのに、それなりに調理してくれれば怪獣映画としてのポテンシャルはかなり発揮されていただろうに、と思うと尚の事惜しい。
最終的に続編を匂わせるような締めでしたが、もし続編が出るようでしたら今度こそ怪獣をしっかりと活用していただきたい。
…まぁ、アサイラムですし叶わない望みでしょうか。

登場する巨大生物を登場人物全員が“怪獣(KAIJU)”と呼称するのはちょっと嬉しかったですね。