ドント

激動の1750日のドントのレビュー・感想・評価

激動の1750日(1990年製作の映画)
-
1990年。三代目の死から、四代目候補の急死により日本最大の暴力組織・山口ぐ……じゃなかった神岡組の跡目争いが混乱。本家神岡組と、新生四代目に納得できず離脱し一和会……じゃなく八矢会の看板を掲げたグループの、ヤクザ史最大の抗争を描く。
外で雨の降る色彩の乏しい座敷、喪服に白い顔をして、鏡を覗きこみながら薄く唇に紅を塗る岡田茉莉子。そこに外から「姐さん、そろそろ」と声がかかり出ていくと中井貴一が座っている。岡田と中井らは揃って傘をさして、三代目の葬儀へと赴く。この冒頭のシークエンスが静かで素晴らしく期待できたが、全体から見ると平坦で凡庸な実録映画になってしまっている。
それなりのイイ顔を揃え、オオッと思わせる場面が幾つもあるけれど、抗争と流血沙汰にも関わらず物語に起伏が乏しく、起きたことをただなぞっているだけという印象が強い。血は流れるが心がうねるドラマがない。脚本のアレもあろうが、映像が「通りいっぺんをやっている」ようでどうも面白くないのである。
東映実録路線の夢再び、みたいな企画だったのだろうが、そもそも89年春に終結した抗争を90年秋に公開したってんだから気が早い。法律改正もあったがモデルとなった組はほぼ勢い衰えぬままだったわけで、そらへんへの配慮(こわい)もこの微妙に穏健で面白味に欠ける内容の一因となったのかもしれない。
一応の主役である中井貴一より、ニヤニヤな夏八木、怒ってばかりの渡瀬、イケイケの陣内、ぬらりとした火野、仁義の中条あたりが美味しいとこをさらっている。夏八木が電話口で「あんなガキに何ができるかい、今度メシでも食」と話している真っ最中に銃撃されてギャッとソファの後ろに隠れるようにスッ転ぶ唐突なシーンが一番好き。しかし中尾彬って、こういう腰の据わらぬ役が似合うなぁ。
ドント

ドント