ikumura

ワイルド・ローズのikumuraのレビュー・感想・評価

ワイルド・ローズ(2018年製作の映画)
3.7
【おらナシュビルさいぐだ】

スコットランド・グラスゴーで才能を持て余すカントリー・「ナッシュビルに行きたい」ガール、ローズ=リンの物語。
( https://www.youtube.com/watch?v=l_Ths6k7qXk )
ジョン・カーニー(Onceダブリン〜etc)好きな人など、特に気に入りそう。
主演のジェシー・バックレイが歌声も演技も素晴らしい。
こんな女優さんいたんだ・・・と思ったが、
すでにイギリスのドラマやミュージカルで活躍してたんですね。

彼女が保護観察付きながら勢いよく出所し、
(足につけられたGPSタグのせいでカウボーイブーツがうまく履けない)
広がるグラスゴーの街並みをバックに
プライマル・スクリームの名曲「カントリー・ガール」のカントリー風カバーが流れるスタート。
「お、名画の匂いがする」と心を掴まれます。
アメリカに憧れるスコティッシュ娘のお話だけど、
グラスゴーが誇るバンド(でもアメリカ南部音楽に多大な影響を受けてる)の曲で始まるんですね。ニクい!

"ママのところにでも帰るんだね、面倒を見てもらえるさ"
彼女の現在に響く歌詞。
予告編にも出てた、お母さんと二人の子供のもとへ戻るのかな・・・
(ローズ=リンはシングルマザー)と思いきや、
彼氏?を訪ねいきなり外で・・・
この時点で「ダメな母」感満載である。
(これは、僕が「母はこうあるべき」と思ってるというより、映画の演出としてそう見える、という話)

やっと母の顔を取り戻し(やることやってからですか)、母と子供に再会するものの、
母には説教されるわ子供は懐いてくれないわで不貞腐れ、
馴染みのライブバーに行けば喧嘩を始めるし、
前科を隠して家政婦として働き始めたお金持ちの家では、
奥さんのいぬまに勝手に高級ウィスキーを飲み干して
酔っ払い熱唱しながら掃除機をかけ・・・
「ああ、これ、ダメダメな女の人の話なのか・・・?」と。

ローズ=リンは、夢追い人、「こんなところにいたってしょうがない、
カントリーの聖地、アメリカのナッシュビルで一旗揚げる」と考えている。
お金さえあれば・・・と思っていた矢先、甘い話に飛びついたのが、
結果、刑務所にいく羽目に。
夢を取るか、子供を取るか、という以前に、性根が座っていないのである。
それを見抜いているお母さんはローズ=リンを厳しく諭し続ける。
「もうバカな夢を追うのはやめて、ちゃんと責任を持って子供たちと向き合いなさい」と。

まあここで話が終わったら金を返せと言いたくなりますが(笑)
ローズ=リンは、腕に、ハーラン・ハワードの名言
「3つのコードと真実」(でカントリーの名曲はできている)
を彫っている。
彼女のtruthはなんなのか?

件のお金持ちの家では、ウィスキー盗み飲みが見咎められることもなく、
彼女の歌声を子供たちが聞いたことから奥さんもカントリーに興味を持ち、
その才能を確信した奥さんの提案で思わぬ道がひらけそうになっていく。

「おばあちゃんの方がいい!」モードの子供たちに困惑していたローズ=リンも、
二人を愛している気持ちに間違いはない。
家事もして、子供の話にも耳を傾け、ちょっとずつ「いいママ」になろうとする。

さて、ローズ=リンはナッシュビルに行けるのでしょうか?
カントリー歌手としての彼女の将来は?
興味を持たれた方はぜひクリップして(未公開の場所にお住いの場合)
公開をお待ちください!(回し者ではありません)

黒人の奥様、スザンナとその子供たちだけが非白人なのだが、
一番上流階級ぽくて英語も綺麗なのが面白かった。
変わっていくイギリス社会の象徴なのだろうか。
演じるソフィー・オコネドーも知らなかった、
と思ったらホテル・ルワンダに出ていたか・・・
最近はナショナル・シアター・ライブのシェイクスピア劇でクレオパトラも演じた模様。

お母さんを演じるジュリー・ウォルターズは流石の貫禄。
二人の子供、特にお姉さん役のデイジー・リトルフィールドは、
利発で察しのいい、多感な年頃の子、といった感じをうまく出していた。

スコットランド訛りについていけないところも多々あったのでストーリーに間違いがあったらすみません。
街の大きさとか歴史とかから言ったらそれこそ名古屋とかにあたるのかもしれないけど、
スコテッシュアクセントはなんだか東北訛りっぽい感じで可愛い。
津軽っていうより秋田弁っぽい・・・(出身でもないのに勝手にすみません)
ikumura

ikumura