えいがうるふ

草間彌生∞INFINITYのえいがうるふのレビュー・感想・評価

草間彌生∞INFINITY(2018年製作の映画)
4.1
観てる人少なそうなので再掲しておきます。

草間彌生といえば誰もが思い浮かべる水玉模様。なんと彼女はそれをわずか10歳の頃から70年以上、全く色褪せない情熱と拘りをもって描き続けているのだった。その偏執的とも言える作風の偏りっぷりはそのまま彼女自身の人物像と重なり、芸術家として生きる茨の道を、全くブレ無く突き進んできた彼女ならではの清々しいほど波乱万丈な生き様が興味深かった。

作中、草間が笑顔を見せたシーンはほんの数秒だったか。「習作が存在しない」という彼女が作品に向かうシーンでは、画面全体に息詰まるような緊張感が漲っていた。幼少の頃の写真はもとより、野生動物のような美貌の若い頃の映像でも、ド派手な老人となった現在でも、常に彼女は眼光するどくこちらを見据えていて、一貫してその表情に安らぎや安穏さは見当たらない。常に鬼気迫るような表情をしている彼女がどれほど凡人の発想とはかけ離れた精神世界でたった一人で芸術と向き合ってきたのか、理解はできずとも自分なりに感じることはできた。

エキセントリックな才能と身体のうちから溢れ出る創作欲と表現欲、その激しさ故に芸術家として生きる以外に道がなかったようにも思われる一人の女性が、自らの才能だけを頼りに世界をまたぎ幾度も人生をリセットさせ、やがて世界中で、ついにはかつて彼女の存在を否定した故郷からその才能を認められるようになるまでの長い道のり・・・とても密度の濃い77分だった。