パケ猫パケたん

草間彌生∞INFINITYのパケ猫パケたんのレビュー・感想・評価

草間彌生∞INFINITY(2018年製作の映画)
4.0
草間彌生さんの壮絶な人生と、芸術を丁寧に描く、秀作ドキュメンタリー。時代が彼女に追いついてきて、爆発的に売れてきて、長年の苦労が報われて、本当に良かった。本作品はドキュメンタリーであり、そして寂しい終わり方ではないので、オイラの思いを以下、箇条書きにします。

1、この映画、長野県松本市、ニューヨーク、東京と場面展開が豊かで、大過去、過去、現在とそれぞれの時代の持つルックと、空気感が伝わって秀逸。

2、草間彌生の瞳、現在、創作中でありながら、入院患者でもある彼女、しかし、この映画に記録された、哲学者にも似た未来を見つめる深い眼差しと眼光で、監督のリスペクトの思いが強く伝わる。

3、ジョージア・オキーフの映像のインサート、草間彌生に大いなる影響を与えた女流画家、彼女の若かりしその映像は、シャーロット・ランプリングをも彷彿とさせる美貌であり、室内を映した柔らかなモノクロームの移動撮影は、微笑を湛えたオキーフの立ち姿へと帰着する。貴重な映像資料であり、この映画の演出としても印象的で、立体感を与える。

4、映画・映像と草間彌生、彼女の作品、閉鎖された小部屋に張り巡らした合わせ鏡の中、無限に増殖する光やオブジェたち。インスタレーション。遅行した『上海から来た女』。等質・無個性なものが増殖するイメージは、細胞分裂みたいな様で自然的であり、人類の憧れのようなものを感じる。同時に、人口爆発や環境破壊などのような、不可避で危険なイメージも。更には、大量消費社会を風刺しているようであり、そのシニカルな風貌は、オーソン・ウェルズやサルバドール・ダリを彷彿とさせる。また彼女の監督作品『草間の自己消滅』(1968)も、独特の世界観を持って居りそうで、とにかく、映像の世界にも草間彌生は、強い共鳴性を放っている。

(5、天才とNHK 、数年前にNHKで、草間彌生の近況を伝えるドキュメンタリーを見た。絵画への強い制作意欲を持ちながらも、精神病院とアトリエを日々往復するだけの単調な生活の彼女。疲弊した姿が容赦なく綴られており、鋭い眼光の草間彌生の描写は乏しかった。もっと彼女に光を与えた演出が欲しかった。天才には無限大∞の称賛を。島国根性で100年遅れないように。そんな思いを持った。)