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マイ・エンジェルのslvのレビュー・感想・評価

マイ・エンジェル(2018年製作の映画)
4.3
マリオン・コティヤール目当てに鑑賞したけど、こんなにシリアスで重いストーリーだと全く思ってなくて、すっかり打ちのめされてしまった…。
だけど、凄く心を揺さぶられた作品でした。

フランス版『フロリダ・プロジェクト』というような趣きだけれど、こちらの作品の方が観ていて精神的にかなりキツかった…。

マリオン・コティヤールは美しくもだらしがない母親マルレーヌ役を見事に演じていて、本当にビッチにしか見えなかったところが凄い。

冒頭の結婚式でマルレーヌが歌い出して、場を微妙な空気にしてしまうシーンから、もはや観ていられないほどにいたたまれなくて、嫌な予感が満載…。

そんな母親を静かに見つめるエリーの少し大人びたような眼差しと、心の内に抱える不安や哀しみ、諦念…といった心情を察するだけで胸が苦しくなった。

8歳の娘エリーを愛してはいるのだけれど、自分のことしか考えられない身勝手な母親マルレーヌは、娘を置き去りにしてパーティーで出会った男の元へと行ってしまう。

どんなにダメな母親でも、エリーにとってはとても大好きで大切な存在なのに、その母親に独りぼっちで置き去りにされるエリーの姿が余りにも切なくやりきれない。

不安と寂しさで押し潰されそうな心を気丈に保ち、母の帰りを待ちながら健気に独りで過ごすエリー。

8歳の子供がお酒を口にする姿は、余りにも痛々しい。

このままでは壊れてしまいそうだったエリーが、フリオを見つけたことに、私は心底救われた。

エリーはフリオにシンパシーを感じたのだろう。
そしてもちろん、フリオの方も。

パフェを食べながら、フリオに子供らしい笑顔を見せるエリーの姿に思わず涙が出た。

エリーを見捨てられないフリオの優しさに、胸が詰まった。

学校の劇で人魚を演じるのが嬉しくて、フリオに観にきてねというエリーがとてもかわいくて愛しい。

それなのに、それなのに。。

演劇の発表会の日、エリーへの余りに残酷な仕打ちにまた胸がえぐられそうになる。

人魚の格好のまま、ある場所へと独りで突き進むエリーの気持ちが、痛いほどわかる気がした。


そして衝撃のラスト。


エリーの読む詩の美しさと、フリオの愛の大きさがぐさりと胸に突き刺さって、涙が止めどなく溢れた。

その後エリーは、フリオは、どうなっただろう…?

切なく重い余韻が残る。
そんなラストが、フランス映画らしくて良いなと思った。

エリーを演じた女の子、本当に素晴らしかった。
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