マリオン・コティヤール目当てに鑑賞したけど、こんなにシリアスで重いストーリーだと全く思ってなくて、すっかり打ちのめされてしまった…。
だけど、凄く心を揺さぶられた作品でした。
フランス版『フロリダ・プロジェクト』というような趣きだけれど、こちらの作品の方が観ていて精神的にかなりキツかった…。
マリオン・コティヤールは美しくもだらしがない母親マルレーヌ役を見事に演じていて、本当にビッチにしか見えなかったところが凄い。
冒頭の結婚式でマルレーヌが歌い出して、場を微妙な空気にしてしまうシーンから、もはや観ていられないほどにいたたまれなくて、嫌な予感が満載…。
そんな母親を静かに見つめるエリーの少し大人びたような眼差しと、心の内に抱える不安や哀しみ、諦念…といった心情を察するだけで胸が苦しくなった。
8歳の娘エリーを愛してはいるのだけれど、自分のことしか考えられない身勝手な母親マルレーヌは、娘を置き去りにしてパーティーで出会った男の元へと行ってしまう。
どんなにダメな母親でも、エリーにとってはとても大好きで大切な存在なのに、その母親に独りぼっちで置き去りにされるエリーの姿が余りにも切なくやりきれない。
不安と寂しさで押し潰されそうな心を気丈に保ち、母の帰りを待ちながら健気に独りで過ごすエリー。
8歳の子供がお酒を口にする姿は、余りにも痛々しい。
このままでは壊れてしまいそうだったエリーが、フリオを見つけたことに、私は心底救われた。
エリーはフリオにシンパシーを感じたのだろう。
そしてもちろん、フリオの方も。
パフェを食べながら、フリオに子供らしい笑顔を見せるエリーの姿に思わず涙が出た。
エリーを見捨てられないフリオの優しさに、胸が詰まった。
学校の劇で人魚を演じるのが嬉しくて、フリオに観にきてねというエリーがとてもかわいくて愛しい。
それなのに、それなのに。。
演劇の発表会の日、エリーへの余りに残酷な仕打ちにまた胸がえぐられそうになる。
人魚の格好のまま、ある場所へと独りで突き進むエリーの気持ちが、痛いほどわかる気がした。
そして衝撃のラスト。
エリーの読む詩の美しさと、フリオの愛の大きさがぐさりと胸に突き刺さって、涙が止めどなく溢れた。
その後エリーは、フリオは、どうなっただろう…?
切なく重い余韻が残る。
そんなラストが、フランス映画らしくて良いなと思った。
エリーを演じた女の子、本当に素晴らしかった。