安堵霊タラコフスキー

犬王の安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

犬王(2021年製作の映画)
4.7
先日ちびまる子ちゃんの映画を鑑賞して、やはり湯浅政明の作品は劇場で拝みたいなと足を運んだわけだけど、予想以上に琴線に触れる要素が多分に含まれていて満足が高かった。

というのも異色のミュージカル映画になっているという情報は耳にしていたものの、主人公二人のライブの模様が露骨にデヴィッド・ボウイやクイーン等々といったド派手な衣装と演出で名を馳せたミュージシャンを思わせる代物となっていて、ドラムやギターの音が響く様子に首を傾げながらも70年代の愛すべきロックを想起させる光景に感動も覚えた。

加えて音楽要素以外においては、主にどろろや火の鳥を意識したであろう手塚治虫オマージュが散見され(どうやら原作の時点でどろろ要素があったから火の鳥的描写を肉付けしたのだろう)、そのどれも効果的に作用していたようにも思えたからただのオマージュの域を越えて手塚作品に触れている心地にすらなれたのが凄かった。

他にも盲目の朧気かつ鮮やかな視点みたいなアニメならではの面白描写が多かったところも流石の湯浅政明と言える部分で、ミュージカルなのに尺が短めだったのが惜しい気持ちになるくらい絶品のアニメ体験となった。