ケイスケ

犬王のケイスケのレビュー・感想・評価

犬王(2021年製作の映画)
3.8
湯浅監督の映画で大好きなのはベタですがや『マインドゲーム』。クライマックスの怒涛の映像は何を見せられているかわからず唖然とするも感動させられる。『夜は短し歩けよ乙女』や『きみと、波にのれたら』も好きですね。

室町時代の京の都、猿楽一座に一人の子供が生まれ犬王と名付けられる。その異様な風貌を隠すように面をかぶせられた犬王は、ある日、呪いにより盲目となった琵琶法師の少年・友魚と出会う。壮絶な運命を生きてきた二人は、歌と舞を披露し合うことで、互いに名乗らずともたちまち意気投合する。過酷な世を生き抜くため、相棒となった二人は互いの才能を刺激し合い、唯一無二の表現者として一時代を築いていく。

すごく不思議な体験をさせられた。よくアーティストのライブ映像の演出を観ているときに「うわ、すげー」って驚くときがありますがそれをアニメーションで体感するという、珍しい映像体験です。アニメのライブシーン自体は音楽を題材にした『BECK』のアニメとかでもありますが、室町時代の能楽師をポップスターにするとか絶対にこの映画でしか観られない。それだけでもう勝ち。

さらにビックリしたのは“犬王”って実在した人物なのかよ!Wikipediaによると「観阿弥と同時期に活躍した近江猿楽日吉座の大夫。猿楽能の名手として観世座の観阿弥・世阿弥と人気を二分した」とのこと。しかも謎多き人物で犬王についての記録は、実際に彼の猿楽を見た人々のものしか無いらしい。ここに目をつけて犬王を異業の存在にした発想が非常に面白い。

そんな犬王に声を吹き込んだのが女王蜂のボーカル、アヴちゃん。この人のことはほとんど知らなかったし女王蜂の曲も聴いたことないんだけど、一度聞いたら忘れられない声の良さ!アヴちゃんを起用したのが素晴らしいですね。友魚の森山未來、足利義満の柄本佑も良かった。柄本佑は同時期に観た『ハケンアニメ!』の役も忘れがたい。

ただ間違いなく作風は人を選ぶかな。人によっては全然合わなかったレビューも結構見ますし。自分も高評価の意見が多い『TITANE/チタン』が全くピンと来ていないので笑、カルト的なアニメとして人気が出るタイプのアニメだと思います。でも間違いなく観るべき作品ですよ。あ!あとラストがめっちゃいいね!この終わり方凄く好きです!