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ドリームプランのmaverickのレビュー・感想・評価

ドリームプラン(2021年製作の映画)
4.7
2021年のアメリカ映画。ビーナス・ウィリアムズとセリーナ・ウィリアムズの二人の偉大な女子テニスプレイヤーの軌跡を、父であるリチャード・ウィリアムズの視点から描いた物語。主演はウィル・スミス。


テニス未経験の男が娘二人のコーチを務め、彼女らを偉大なテニスプレイヤーに育て上げてゆく。家族は裕福ではなく、周りはギャングがはびこるような環境。その中で知恵を働かせ、強い精神力の下に夢を成し遂げる姿に熱い感動を覚える。父が示したドリームプランとはどのようなものだったのか、成功をつかみ取るのに必要なことがそこに記されている。

役者の熱演に魅せられる人間ドラマとしてはもちろん、物語上重要なテニスの描写も非常にクオリティが高い。ビーナスとセリーナ役の二人の上手さによる説得力に加え、コーチ役の面々や相手選手も本物に見える。試合会場の熱気もリアル。コートでの一進一退の攻防には興奮を覚える。こうした要素が本作を高い評価へと繋げている点も見事だ。

二人の父であるリチャードが重要視した部分。それは何より本人の人間性。どんなにテニスが上手かろうが、それが無くては駄目だということ。彼が教えたのはテニスのことだけじゃない。自分の子供を一人前の人間に育て上げることに情熱を尽くした。才能ある娘を汚い大人たちの金づるとさせなかったのだ。人間性を磨くには教育が大事と考え、勉強の成績が悪ければテニスもさせなかった。才能があっても人間性が備わっていない人間は自滅する。ビーナスとセリーナが道を踏み外さずに一人前に成長出来たのは、他でもない父のおかげであった。子供の成長を考えるという点においても、本作は実にためになる話である。

父リチャードを演じたウィル・スミスは、本作でアカデミー賞主演男優賞を受賞。授賞式での騒動で、不本意な注目を浴びてしまったのは残念としか言いようがない。だがそれとは別にして、本作での熱演は見事なものであった。彼の熱演がなければ、本作のここまでの評価にも繋がらなかったと思う。リチャードが家族の中心であったように、演じたウィル・スミスもこの作品の中心的存在を担っていた。彼が周りの演者の良い演技を引き出したのである。


ビーナスとセリーナの数々の逸話を知れたのも良かった。二人がどれだけ凄い選手だったのかを本作だけでも知ることが出来る。その偉大なプレイヤーを育てた父の話。学びの多い素晴らしい作品であった。
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