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生きるのmasaのレビュー・感想・評価

生きる(1952年製作の映画)
4.4
これは……世界の黒澤はやはり凄い。

自分だったら、癌で余命半年ですと分かったら、どうだろう。逆に寝込んで何もやる気がしなくなるんじゃないか。
しかし、この作品を観て最期を知り逆に人生が輝く最後を迎えたいと思った。

生きるということはどう言うことか、人生気づくのに遅いということはない、ということを教えてくる素晴らしい作品。

そして志村喬の鬼気迫る迫真の演技。あの目力は忘れらない。

黒澤作品を観るのはこれがまだ4作目で、正直リメイクのビル・ナイ主演の生きるLIVINGを観るための予習という部分もありました。
しかし、観て良かった。

老人を主人公にした世界的名作の1本として、観る者に深い感銘を与えずにはおかない作品。
黒澤明の最高傑作と賞する人も多い。

市役所の市民課長・渡辺勘治は、30年間無欠勤という模範的な役人だが、ある日自分が胃ガンで余命いくばくもないことを知る。
早くに死に別れた妻との間の息子にも冷たくされ、絶望と孤独に陥った渡辺は、街へさ迷い出て飲み慣れない酒を飲む。
自分の人生とは一体何だったのか……。
しかし、元気な女性と出会い渡辺は人間が本当に生きるということの意味を考え始め、人生の最後に少しでも市民の役に立つことをしようと、下水溜りを改善して小公園を作ることに情熱を注ぐ……。

黒澤明は、非人間的な官僚主義に対して痛烈に批判するとともに、人間が生きることについての哲学的な問題をも提示している。

今のお役所のやっつけ仕事、きたない選挙、お偉方優先、ことなかれ主義の世知辛い世の中は、今も昔も全く変わってない。この官僚主義に猛烈に映像で批判している。

ラストのブランコのシーンは一生忘れられない。
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