Arisa

生きるのArisaのレビュー・感想・評価

生きる(1952年製作の映画)
3.8
レビュー書き直しました。



志村喬さん演じる主人公

市役所の市民課長を勤めている渡辺勘治は
毎日判子を押すばかりの退屈な人生を送っていた。
生きているのに死んでいるも同然(部下に影でミイラと呼ばれている)


ん〜志村喬さんの演技が良いですよね~背中が丸くて歩き方も冴えない。ほんとにミイラみたい。
他の黒澤映画では安定感のある頼れる役を演じているのですが、これはこれでハマっています。


渡辺勘治は、倅のために生きてきて他に生き甲斐もない。
でも当の息子はそんな気持ちを知る由もなく…
勘治の退職金をあてにして自分たち夫婦の家を建てようとしているんですよね。


親の心子知らずとはこういう事ですね


実はこの時既に勘治は、自分が胃がんである事を悟っています。
胃がんである事を知ってしまいその事を一番に息子に伝えたくて息子夫婦の部屋で待っていたんだけど結局言えずじまい。


そのあと、色々な遊びを体験するんだけどまだミイラのまま。



しばらくして
一緒の市民課で働いていた部下のトヨと遊ぶようになり「どうして君はそんなに楽しそうなんだ」と問うんです。
トヨは作っているうさぎのおもちゃを出します。
おもちゃを作っていると日本中の赤ちゃんと繋がれる気がすると言いました。
そして
「何かを作ってみれば?」とトヨのひと言で渡辺勘治が生まれ変わります。




このシーンがとっても良くて。





喫茶店にいる勘治達と階段を挟んだ向かい側に学生が10数人いて今からくるお友達の誕生日祝いをするシーンなんですよね





ハッピーバースデートゥーユー






だんだんと勘治が変わっていきます。




それは



死を意識してからはじめて「生きる」という事に目覚めた瞬間。




それは勘治の二度目のバースデーとなった日。




目的ができてやっと生き始めた自分の誕生日




それが学生たちの歌うハッピーバースデートゥーユーと重なるんですね。




この演出を考えた黒澤明監督ってやっぱりすごいと思いました。ラストのあのシーンに次ぐ名シーンだと思います。



この全く違う意味の誕生日のリンクするシーンが素敵だなって思いました。
(ちなみに、ミュージカル「生きる」も観ましたがこのシーンがとっても感動的な歌に繋がります。
1部の最後のシーンなんですが涙必須です。市村正親さん、本当に歌うまかった~~)




生まれ変わってからの勘治はどうなるかというと

すぐお葬式のシーンに変わるんですよね

ここからは回想シーンで
勘治が二度目の誕生日を迎えてから亡くなる寸前までの行動がだんだんと明かされていきます。


人はいつか死にます。死にゆくその時までに自分はどう生きられるのか。



人が生きた価値は
自分の命尽きたあともどれだけの人達が泣いてくれたか。
どれだけの人達に感謝されたか。




命の醍醐味とはそれに尽きるのではないかと思います。




主人公 渡辺勘治の残したかった証とはなにか




それはね、弔問にきた奥さん達の姿が彼がどう生きたかを教えてくれているんです。



黒澤明の代表作とは必ずしも言えないかもしれない。超感動大作ではないけれどこの作品から学ぶことは多いと思います(^^)
Arisa

Arisa